出版社内容情報
【目次】
内容説明
軍艦の浮かぶ港町・呉。海の向こうではもうひとつの戦争が終わろうとしている。ユウ、クンヒ、世津、ジュンヒ、英子。遊郭の残る町を生きる、出自も年齢も異なる五人の女。母娘の血、共同風呂の身体、憧れと恋心、片目の猫、日記と手紙、些細なはずだった暴力。絡みあい、搦めあう宿命で結ばれながら、女たちは自らの生を見つめ、終わらない戦争を生き抜く。
著者等紹介
土門蘭[ドモンラン]
1985年広島県呉市生まれ。同志社大学文学部卒業。本作が初の小説作品(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
83
「夜の空は、夜の海のようだ」。詩的な始まりに引き込まれる。ただ、その開放的な果てしなさの先にある底の見えない深い闇の色に畏怖の念を抱いた。それはこの小説そのものを表していたように思う。朝鮮戦争の末、遊里の名残がある呉市の朝日町。そこで暮らす女性たちが描かれる。目次に並ぶ五人の名前。読む前は色のない文字。読後に改めて見ると一人一人の生きた証が目の前に浮かんだ。母と娘の鏡面の嫌悪関係、欠けた帰属意識の孤独を戦争が排出したもので補う関係。その連なりは停戦で断たれたか。それとも光で新たな連なりが見れたはずなのか。2026/09/09
けんとまん1007
47
人が生きるエネルギーとは、どこから来るのだろうか・・を思う。そのエネルギーに触れた人たちも、自ずと、変わっていかざるを得ない。戦争とはいったい何なのか。命の存在だけでないものを感じてしまう。2026/09/06
ケディーボーイ
30
戦後、過酷な状況を生きる女性たちの物語。 その苛烈さに反比例する情景描写の美しさが逆に胸を抉る。 登場人物達はたしかに強く生きてはいるが、そこに無理も生じている。 真に自分を通しているのはクンヒだけで、でも彼女すら生きるためには形式としては男に頼らざるをえない。 強く生きているように見える人たちも、本当に強いからそうしているとは限らない。 「そうするしかなかった」結果として、生き延びる強さを身につけてしまった人たちもいる。 その強さの裏側にあるものをこの作品はとても静かに、でも残酷なほど鮮明に描いている。2026/09/22
どら猫さとっち
10
タイトルからして、坂口安吾のオマージュかと思いきや、そうではなかった。1953年、広島県呉市で娼婦として生きた女たちとその家族と男たちの愛憎を描いた、「ほんとうのことを書く練習」の著者の初の連作小説。本書の戦争とは第二次世界大戦ではなく、1953年の朝鮮戦争のこと。それでも彼女たちは闘い生きてきた。女であることの苦しみと喜び。残酷なまでの美しさが読者を引きつけてやまない。2026/09/27
フキノトウ
9
嫌な描写(辛い)も多くありました。遊郭跡地で身体を売る女たち。「世津」編が凄まじい。彼女はどこか自分に起きることを俯瞰して見ている感じで、読みやすかった。2026/09/25




