出版社内容情報
SNS上のカリスマアカウント〈スメラミシング〉を崇拝する”覚醒者”たちの白昼のオフ会。かれらを観察する陰謀論ソムリエ・〈タキムラ〉の願いとは? 壊れゆく世界の未来を問う、現代の黙示録。宗教 ✕ 超弩級エンタメ6篇を収録した絶品作品集!
内容説明
七十人訳聖書の秘密をめぐる歴史SF(「七十人の翻訳者たち」)、天皇の棺を運ぶ一族の末裔による労働バイオレンス小説(「密林の殯」)、最後の宗教“セロ・インフィニティ”にまつわる魔術的数学奇譚(「神についての方程式」)、神が禁忌とされた惑星の不都合な真実(「啓蒙の光が、すべての幻を祓う日まで」)…。信仰の虚妄と救いを描く、黙示録的作品集。
著者等紹介
小川哲[オガワサトシ]
1986年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年、「ユートロニカのこちら側」でハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビュー。2017年刊行の『ゲームの王国』で山本周五郎賞、日本SF大賞を受賞。2022年刊行の『地図と拳』で山田風太郎賞、直木三十五賞を受賞。同年刊行の『君のクイズ』が日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
216
小川 哲、5作目です。本書は、宗教系連作短編集でした。 オススメは、『密林の殯』&表題作『スメラミシング』です。 https://web.kawade.co.jp/information/96797/2024/11/16
旅するランナー
203
人類は三つの「キゲン」に縛られている。「機嫌」「期限」「起源」である。聖書、八瀬童子、世界、ゼロ、宗教、自転停止の起源を探る6短編。かなりぶっ飛んでいるけど、知的好奇心を刺激する面白さがあります。期限を決めてしっかり読めば、機嫌良くなること間違いなし。2024/12/22
ふみあき
122
著者のSFがそろそろ読みたいと思っていたので、うれしい限り。しかし短編集(著者の本領は長編でこそ発揮される、と個人的には思っている)。しかも過去の作品と比べても突出して難解。SFって言っても、まさにスペキュレイティブ・フィクション(思弁的小説)。2024/10/18
Kanonlicht
108
信仰をテーマにした6つの短編。長い時間をかけ多くの人々が関わる宗教にあって、確かに存在するであろう発生源や転換点としての一個人の話が面白い。ある人物のSNS上の支離滅裂なつぶやきを第三者が拡大解釈することで信仰が広がっていく表題作や、神の存在を認めることが重罪となる「啓蒙の光が、すべての幻を祓う日まで」など、視点は相変わらず斬新。これでまたしばらく著者の作品が読めないのかと後半はもったいない気持ちで読んだけど、サイン会で来年は新刊がたくさん出る予定と言っていたので楽しみ。2024/10/24
buchipanda3
107
短篇集。語りが巧いなと。著者らしく事実を巧みに混淆させた偽書(=物語)を魅惑的に描いていた。偽史や偽書が人を惹きつけるのは、現実への反発か逃避か、それとも嘘の背徳性への共鳴か。著者の語りには遊び心があり、どこか戯れるエンタメ性を見せながら、一方でズシンと真面目な論題も提示する。特に表題作や2篇目からは脆く危うげな叫びが轟く。人は生きるのに理由を求め、誤魔化しの出来ない世の中ゆえに物語を求めるなど仰々しそうな題を偽書を通して現実的に語り掛ける。そして最後の篇では自尊、自身への信心の希望を示したように思えた。2024/12/04