内容説明
スポーツ記者の直生は、栄神タイガースの抑えのエース宮城峻太朗に絶大な信頼を置かれている。ある日、直生は宮城がメジャーへ挑戦することを知らされる。その挑戦を喜ぶと同時に、少しだけ羨ましく思う直生。いつか自分も独立して海外で取材がしたい…彼には二人の娘がいるのだが、次女の奏が自閉スペクトラム症で、子育てを妻の栞に任せっきりだった。そんな中、奏が怪我をして入院することに。緊張の糸が切れたように崩れ落ちる栞を前に、直生は何一つ声をかけることができない。深まる溝、先の見えない未来。後悔の中、彼は思う。そもそも自分は、なぜ、この仕事を選んだのか…すると、中学時代に出会った先輩・佐々倉美琴の姿が脳裏に浮かんできた。いま、小さな再生の物語が幕を開ける。
著者等紹介
岡田真理[オカダマリ]
1978年静岡県生まれ、立教大学文学部卒業。プロアスリートのマネージャーを経てフリーランスライターに転身。約15年にわたってプロ野球を中心に様々なスポーツの現場を取材。2023年に脚本家デビューし、連続テレビドラマの脚本を担当。執筆活動のほか、公益財団法人全日本軟式野球連盟などのスポーツ団体に理事として関わり、自らもスポーツを通じて社会課題を解決するNPO法人を運営している。2024年、デビュー小説『ぬくもりの旋律』を上梓(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぼっちゃん
49
【第12回静岡書店大賞受賞作】プロ野球のスポーツ記者の話で始まるのでスポーツものかと思いきや、章ごとに異なる人物の視点で描かれ、中学時代の思い出の青春あり、子育ての苦悩ありの感動ものだった。主人公の妻が、自閉スペクトラム症の子供のことを一人抱えるのは辛かったが、人と人とのつながりで希望が見えるぬくもりのある作品だった。2024/12/15
konoha
47
2024静岡書店大賞作品。重いテーマもあったが、素直な柔らかい文章で終始心地良く読めた。スポーツ新聞の記者として働く月ヶ瀬直生は一見順調だが、自閉症の娘の事で悩みを抱える。直生の変化と共に人と人のつながりが明らかになっていく。登場人物のキャラは立っているのに語り手がよく変わり、どのエピソードが主か分かりづらいのがもったいない。静岡の風景を織り交ぜ、学生時代の瑞々しい気持ち、大人の迷いや苦悩、喜びを上手く表現している。野球選手や記者の仕事、自閉症の描写がリアル。フレッシュで鮮やかなのが魅力的。2025/03/20
ヲム
28
すごく読後感が良かったです。本屋大賞ノミネートするような気がします。2025/02/01
やっちゃん
20
ラジオや林間学校など昭和感がいい、黒い青春がセピア色で蘇ってくる‥おじさんもバンダナ交換したかったわ。プロ野球番記者としてのお仕事小説としても楽しめた。「我慢って愛情表現じゃないと僕は思うんです。自分が自分らしく生きていないと結局まわりを傷つけるって」静岡書店大賞2025/04/20
すみの
18
関西プロ球団番記者の月ノ瀬真生には、発達障害の次女を中心に長女、妻の家族4人。不在がちな真生は当てに出来ず、ワンオペ妻は就学前の次女に思い悩むことが多い。子育てが一番しんどい時期と思うが、巻末に向かって家族の絆を再確認していく。いろんな出来事が各登場人物に起こるのだが、水が流れるように頭に入ってこなかった。真生が家族として、仕事人として感じる、この先の焦燥感、不安などが今ひとつ伝わってこなかった。2025/01/24