内容説明
「ただ私は戦闘機という機械に乗りたかっただけで、その戦闘機の飛ぶ空が“護国の空”だったのです」少年は、空を夢見、そして空へ羽ばたく。空を支配する重力・Gに取り憑かれ、戦闘機F‐35‐Bを操る航空宇宙自衛隊員・易永透。日本・タイ・バングラデシュを舞台に描かれる、魂の垂直離陸。直木賞と山本周五郎賞をW受賞した『テスカトリポカ』から2年、構想5年―日本の戦後精神の支柱「三島由紀夫」に挑んだ、佐藤究・圧巻の第4長編。
著者等紹介
佐藤究[サトウキワム]
1977年、福岡県生まれ。2004年、佐藤憲胤名義で執筆した『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となりデビュー。16年、佐藤究名義の『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。18年『Ank:a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞と第39回吉川英治文学新人賞を、21年『テスカトリポカ』で第34回山本周五郎賞と第165回直木賞をそれぞれダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
263
12月の第一作は、佐藤 究の直木賞受賞後第一作です。佐藤 究、5作目です。本書は、三島由紀夫「豊饒の海」のオマージュ、直木賞受賞は伊達ではない、思いっ切りGのかかる凄まじい小説でした。 今年のBEST20候補です。 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309031385/2023/12/01
パトラッシュ
241
自分から見た三島由紀夫を書こうとしたと、著者は語っている。それが成功していると思えないのは、長く読んできて確立した個人的な三島観と違いすぎるからだ。第一に空を飛ぶことにしか関心のない主人公の易永透は、三島文学に特徴的な認識者ではない。自分が追求する対象を徹底して考え抜く部分がなく、官能性も感じられない。第二に後半はアジア放浪が中心で、空とは事実上無縁に生きている描写が続き、ジャングルから戦闘機を発信させるラストが唐突で、全体から浮いている。むしろ兵隊として天皇のために死ねる幸福な三島を書くべきではと思う。2023/11/13
美紀ちゃん
158
ラジオである作家が昨年読んだ本の中で「幽玄F」がいちばん面白かったと言っていたので読んでみた。航空宇宙自衛隊。戦闘機はF15が好き。その迫力はわかる。この本の主人公はF 35Bのパイロット。戦闘機のパイロット。訓練飛行中に幻に悩まされ呼吸困難に。それ以来、戦闘機からは離れることになる。国外の民間の航空会社などで働くが、やはり戦闘機のりは戦闘機に乗りたいのだと思う。森の中で会った僧侶は夢?その僧侶が「幽玄に心をとめよ」と。正直、主人公に好感は持てないがラストもすごい迫力!飛行シーンがとにかくカッコよかった。2024/02/01
のぶ
138
佐藤究さんは前作「テスカトリボカ」がとても良かったので期待して読んだ。前作ほどではなかったが面白かった。三島由紀夫の「豊饒の海」のオマージュも含まれていると聞いていたので、どんな形で表されているのか気になったが、主人公の名前、易永透が「天人五衰」の安永透に似ているぐらいで、それ以外それはそんなに分からなかった。子どもの頃から飛行機に憧れ、パイロットとして成長していく姿と、仏、蛇、戦闘機、近未来・・・、不思議な世界が交錯するそれからの人生にとても感銘を受けた。三島をもう一度読み返したくなった。2023/12/16
はにこ
103
戦闘機に心を奪われた男の一生。飛行機にも三島にも詳しくないので、どこまで理解できたかは微妙だけど、淡々と進むのにページをめくるのを止められなかった。自衛隊からタイ、そしてバングラディシュに流れていく中で彼は幸せだったのだろうか。感情があまり描かれていないだけに、透の神秘性が増しているようだった。2024/02/11