出版社内容情報
永遠の問題作は今いかに読まれうるのか。エッセイ、対談、必読研究論考など、これまでの『こころ』論をベストセレクション。新規鼎談/エッセイ、近年の重要論考を追加した増補版。
著者情報
1955年生まれ。早稲田大学教育・総合科学学術院教授(日本近代文学)。『読者はどこにいるのか』『受験国語が君を救う!』『教養としての大学受験国語』『『こころ』で読みなおす漱石文学』など。
目次
石原千秋―『こころ』はどう読まれてきたか
対談
鼎談 石原千秋×生方智子×小森陽一―学校小説としての『こころ』
エッセイ
講演
評論
石原千秋―『こころ』をこれからどう読むか
著者等紹介
石原千秋[イシハラチアキ]
1955年、東京都生まれ。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。専攻は日本近代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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マカロニ マカロン
13
個人の感想です:B+。2022年末に出されたこの「増補版」は現在読める『こころ』に関する様々な見方を網羅している。全部で26の対談、エッセイ、講演、評論が集録されており、中には対立する読み方もあるが、そこが面白い。石原千秋さんの言うとおり『こころ』は国民的ネタバレだから、何を言ってもOKというのがこの本の魅力でもあると思う。乃木将軍の妻と同じ名前の「静」が後追い自殺するという説は賛成できない。陰キャな先生が死んで、やっと楽になれた陽キャな奥さんは悠々自適だろう。但し「先生」の遺産が無事手に入るのが条件だが2023/11/16
コニコ@共楽
11
夏目漱石を再読しつつ、『こころ』の読み方を論じているこの本を手に取ってみた。特に対談「奥泉光×いとうせいこう」が際立って面白かった。『こころ』の再読で、冒頭のシーンが『ヴェニスに死す』を連想されると感じたことを同じように思った人がいると、嬉しくなった次第。また、対談「水村美苗×小森陽一」も俊逸だった。先生とKとの関係に、漱石と正岡子規の関係を重ね合わせたり、頷きながら楽しんだ。水村氏が、先生の遺書の文体を”非常に女性的な文体ではないでしょうか”と評しているところも刺激的。『こころ』を多面的に読める良書だ。2023/12/21
訪問者
5
柄谷行人、吉本隆明といった大御所から若手の三宅香帆まで様々な人が『こころ』を語って面白い。しかし、昔は明治天皇崩御、乃木将軍殉死を踏まえた「明治の精神」といったところから語られた『こころ』だが、本書では東浩紀を始めとして「私」と「先生」そして「先生」と「K」との同性愛志向から論じ始めている人が多い。2024/03/18
カモメ
1
お嬢さんへの「愛」が三角関係によって形成されたという見方が複数ある。Kを下宿に連れてきた理由はお嬢さんが結婚に値する女性であることを保証してもらいたかった、妻とすることを誇りたかったからであり、何かをやってしまうのは「心」からではなく他者との関係によってであることを示している。漱石は家どうしの結婚に反感を見せ肉欲を排除しようとしていたが、焼け付くような手応えが欲しいと焦り筋違いの嫉妬の感情に身を委ねることになったのは皮肉という見方も面白い。一方で、無条件に先生がKを尊敬していたわけではない、先生はKがくる2025/09/27
石
1
自分の読み方が、他の人と違うということが良くわかってとても勉強になる。優柔不断で言い訳ばかりしてる男が、最後の言い訳をする話みたいに思って読んだから、明治の精神に殉じるという読み方をするとは思いもよらなかった。そう知ったあとも、自分にはそうは読めそうもない。ボーイズラブ説は意外に説得力を感じたが、まともな解釈というより2次創作と呼ぶのが適当と思う。多くは、勝手な理屈を振り回すだけで価値のない議論に思える。とはいえ、こういう本を読むことは有益だと思う。自分が受容できるのに時間がいるだけなのかもしれないし。2023/04/18
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