出版社内容情報
20世紀初頭、帝政末期のロシア。時代の悪意に翻弄された一人の女性の愛と復讐を、新鋭が描破する。「百合×歴史×SF」傑作長篇。
内容説明
帝政ロシア×百合×SF。あなたを愛することを許さない敵は、神か、王か、革命か。小説の未来を担う新星が叩きつける、破格の初長篇。
著者等紹介
南木義隆[ナンボクヨシタカ]
1991年生まれ、大阪府出身。2019年、「コミック百合姫×pixiv百合文芸小説コンテスト」に投稿した「月と怪物」が“ソ連百合”として大きな反響を集める。同作が『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー』(ハヤカワ文庫JA)に収録されデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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雪紫
58
読友さんからのおすすめ。帝政ロシア時代に生きるひとりの同性愛者の人生の軌跡。美味しそうな料理に目を奪われても(後日サラートサニーレタスで作ったけど美味しかった)描かれるのは愛と歴史の残酷さとその自己正当化に振り回され、失いながらも生きていく光景は静かで、時に激しく物哀しい。でも、夢見たっていいじゃないお伽話を。2023/03/27
泰然
39
愛は疑ったときに終わる。帝政ロシアを舞台に不思議さと儚さがさながらサイエンスフィクションの様相を見せながら破滅的な歴史に翻弄される少女の心と愛が描かれる。バレリーナを夢見る貴族令嬢のエレナと、孤児で不良少年風の使用人キ―ラのすれ違いが美しくも痛い。数々の料理の美味な描写が意表を突き、帝政改革で言語も文化もフランスびいきであったロシア貴族の素顔と物語の構想に旨く絡む。転換点の革命の嵐による転落と、あの革命思想家と主人公の対面でジャンルレスな魅力を発揮して、神と政治と闘争で凄惨に彷徨うプシュケ―の物語になる。2022/09/11
よっち
33
あなたを愛することを許さない敵は神か、王か、革命か。20世紀初頭、帝政末期のロシアを舞台に、時代の悪意に翻弄された一人の女性の愛と復讐を描く物語。孤児として養親の祖父・祖母に育てられ、貴族の娘エレナの従者となったキーラ。女性の生き方や考え方も少しずつ変わりつつある一方、終焉を迎えつつある帝国やユダヤに対する迫害など、混乱する情勢にその人生はたびたび翻弄される展開で、キーラが激動の時代に実業家として頭角を現しながら、大切な存在が失われる絶望から復讐に駆り立てられてゆくその不器用な生き様はなかなか鮮烈でした。2022/08/14
羊山羊
16
主人公キーラと主人エレナのソ連百合歴史改変小説。ハードボイルドの様な硬質で客 観的な文体からキーラの運命と心の葛藤に舌なめずり!とにかく印象的だったのが料 理描写。エレナの祖母を連れてレストランへ向かい料理を味わうそのシーンが、キー ラのその後の運命を左右する決定的なシーンでありながらも卓越した料理描写がすご くいい。いつまでも本著の文体に浸っていたくなるそんな1冊。2023/03/21
組織液
11
何というか…キーラは個人単体というより、当時としても保守的で強硬な階級社会であったロシア帝国において、虐げられていた人々の宿望のような存在に思えました。だからというか、正直エレナとの関係は物語の中心に据えられている割には薄すぎる気がしますね。帝政ロシア社会はうまく描かれていましたが、百合とSFはいろいろと惜しい印象です。2024/04/29