出版社内容情報
偶然再会することになった、花ちゃんとなごやん。あの『逃亡くそたわけ』から十数年、家族を持ったふたりが、富山を舞台に駆け回る!
内容説明
名古屋出身の「なごやん」と繰り広げた九州縦断の脱走劇から十数年後―。富山県のひょんな場所でなごやんと再会した「花ちゃん」。夫のアキオちゃんと娘・佳音の成長を愛おしむ日々に、なごやん一家と遊ぶ楽しみが加わった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大でその生活が一変!!続々とやってくる不安の波に押しつぶされそうになりながら、花ちゃんが出会ったもうひとりの自分とは?富山県を舞台に『逃亡くそたわけ』の続編が幕を開ける!
著者等紹介
絲山秋子[イトヤマアキコ]
1966年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、住宅設備機器メーカーに入社し、2001年まで営業職として福岡、名古屋、群馬、埼玉に勤務する。2003年「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞、2004年「袋小路の男」で川端康成文学賞、2005年『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、2006年「沖で待つ」で芥川賞、2016年『薄情』で谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっちゃん
170
逐一「わかる、わかる」主人公花ちゃんの心情を慮りながら読む。穏やかに暮らせていたとしても、何かの拍子に沸き上がる落ち込み、不公平感、焦燥感、ひとの負の感情、それをこのコロナ禍は増大させてしまったように思える。マスクや消毒液を求めてドラッグストアを廻った事、布マスクをちくちく縫ったけど、いつか悪役扱いされてしまった事、市外に出る時に自分の車のナンバーを気にしたこと、早く昔の事として笑い飛ばせるようになったらいい。なごやんが賞を獲った脚本、大好きな話だから作品で読みたい。花ちゃんもなごやんもどうか幸せに。2022/08/15
名古屋ケムンパス
145
10年ぶりに「なごやん」と「花ちゃん」に再会できるなんて、夢にも思いませんでした。二人の再会が名古屋や博多でなく富山だなんて、でも何故だか真実味がありますね。小説なのに、本当は花ちゃんのエッセイのように感じてしまいました。飛騨のキャンプ場から「逃亡」した柴犬の小太郎が途轍もなく愛しいですね。電話を貰えれば、なごやんの実家の近所に住んでいるので、お二人にお会いできたのにと、無理と分かっていても、誠に残念です。2023/03/17
のぶ
144
本書が「逃亡くそたわけ」の続編だと知らずにいきなり読んだ。またやってしまった。自分はそちらを読んでいないのだ。花ちゃんがなごやんと再会するところから始まるが、その経緯が分からないところが何とももどかしい。そんな未知の部分はあるものの、この本だけでも魅力は十分に伝わってきた。作品の中に登場する名古屋は今住んでいるし、福岡にも住んだ事がある。舞台の富山は何度か訪れた。とても良いところだ。物語はそんな登場人物がコロナ禍での何気ない生活を描いたもの。人物の個性がうまく出ていて面白かった。前作を読もうと思う。2022/06/02
まちゃ
143
タイトルに惹かれて手にした一冊。富山県で夫・アキオちゃん、娘・佳音と暮らす花ちゃんが日常生活で感じた不安や安らぎ。コロナ禍を経験したからこそ感じる安寧な日々の大切さ。淡々とした文章から、そんなことを感じさせる作品でした。冒頭の富山県の地図は途中で何度も見返しました。/忘備録「逃亡くそたわけ」の後日譚。「逃亡くそたわけ」は、花ちゃんが「なごやん」と繰り広げた九州縦断の脱走劇2022/09/28
bura
134
「逃走くそたわけ」続編。「あたしはいつまでまっとうに生きることができるのだろうか?」嫁ぎ先の富山県で夫と娘との幸せな家庭を持ちながら花ちゃんはふと思った。氷見の街中でやはり妻と息子を持ったなごやんとバッタリ出会って再び家族共々の交流が始まった。前作の様なパワフルな逃亡劇ではなく、かなりリアルなコロナ禍での暮らしを描いた物語。前回は「逃げる」今回は「とどまる」真逆なテーマだが花ちゃんの心の葛藤は底辺では変わらない。 娘が何気なく教えてくれたお日さまの光の暖かさにその答えがあると思った。人生は続いていく。2022/07/12
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