出版社内容情報
若き日の知られざる貴重な童話二作。『沈黙』構想の礎となった「稔と仔犬」は、まさに「踏み絵」を連想させる衝撃作、初の単行本化!
内容説明
暗く貧しき日々に、光を与えてくれた一匹の仔犬。少年に迫りくる残酷な運命の足音―『沈黙』の原点とも言える衝撃作、初の単行本化!人生の「同伴者」を描く知られざる名篇。
著者等紹介
遠藤周作[エンドウシュウサク]
1923年、東京生まれ。幼年期を旧満州大連で過ごす。神戸に帰国後、十二歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒業。50年から53年までフランスに留学。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア小説や歴史小説、戯曲、「狐狸庵もの」と称される軽妙洒脱なエッセイなど、多岐にわたる旺盛な執筆活動を続けた。55年「白い人」で芥川賞、58年『海と毒薬』で新潮社文学賞、毎日出版文化賞、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞、79年『キリストの誕生』で読売文学賞、80年『侍』で野間文芸賞、94年『深い河』で毎日芸術賞、95年文化勲章受章。96年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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桜もち 太郎
16
遠藤周作が描く童話ということで読んでみた。「稔と仔犬」で「生きていくことには諦めねばならぬことがあまりに多い」と犬を飼うことに母親に反対された稔が悟る場面が印象的。いじめっ子に言われ、マリア像を空気銃で撃つか、可愛がっている犬を撃つのか、究極の選択を迫られる稔。「沈黙」の原点と言われる物語だけあって奥深さがあった。「青いお城」はりぼんに掲載された少女もの。こちらの方が物語としては面白かった。 2023/05/16
がんもどき
7
「稔と仔犬」はちょっと物足りない終わり方だと感じた。逆に「青いお城」は60年代の少女漫画雑誌に小説が乗っていたというのは驚きだったが、連載物だったとはいえだらだらと長いと感じた。2022/05/06
ころちくわ
7
遠藤周作の未発表作品。子供向けの物語2話。「稔と仔犬」は挿絵も残っていて、昭和30年代頃の様子がうかがえる。当時もいじめっ子はいたし、代議士は平気で犬をひき殺す。連載の最後が欠落しているような終わり方だが、あえて書かなかったのかもしれない。「沈黙」と「深い河」しか読んだことがないが、帯にある「沈黙」の原点になる作品、とは思わない。「青いお城」は頑張れば報われる、という成長期の時代に合わせたもので、りぼんに連載されていた。当時、名だたる作家が連載していた。吉行淳之介、曽野綾子、阿川弘之、三浦朱門。2022/04/18
ぷるぷる
6
発掘作品集。童話って感じはしませんでした。「沈黙」と同じテーマと思われる「稔と仔犬」は尻切れトンボですが心の奥底に響くようで好きです。「青いお城」は流石に時代を感じさせて、少女雑誌に連載されていたらしい内容で正直退屈なんですが平吉くんは「おばかさん」のガストンに通じるかもなと思えば興味も湧きます。既存の作品を読み尽くしたような、この作家が大好きな人にとっては読む価値高しですが、発掘しなくてはいけないほど埋もれてしまった作品なのも納得するくらいの出来だと思いました。2022/05/07
たつや
4
図書館で見つけた一冊です。遠藤周作の初期の童話は二本収録。表題作の稔と仔犬は踏み絵的な作品でした。どうも、キリスト教に関連する団体の発行する雑誌に連載された様なので、自ずと宗教的な作品に仕上がってます。ただ、え?これで終わり、という感じで尻切れトンボでした。もっと書いていれば、有名な作品が残ったのでは?等と思う。2023/10/08