出版社内容情報
「私は確かにその二人を知っていた。もっとも、私はその二人の顔も名前も知らない。」恩田陸の新境地となる、“事実に基づく物語”。
内容説明
私は確かにその二人を知っていた。もっとも、私はその二人の顔も名前も知らない。始まりは、三面記事、これは“事実に基づく物語”
著者等紹介
恩田陸[オンダリク]
1964年、宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞と本屋大賞、06年『ユージニア』で日本推理作家協会賞、07年『中庭の出来事』で山本周五郎賞、17年『蜜蜂と遠雷』で直木三十五賞と二度目の本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
410
四月の第一作は、恩田 陸の最新作です。恩田 陸は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、私小説的な二進法幻想小説でした。続いて、『白の劇場』へ。 https://book.asahi.com/article/142189342021/04/01
旅するランナー
322
大学時代の友人同士で一緒に住んでいた女性二人が橋の上から飛び降り自殺した記事が、刺さった棘のように作家の心に引っ掛かる。小説化・舞台化されていく中で、現実と架空が混ざり合う。リアルな幻想、現実感のある妄想、地に足ついた空想が沸き上がる。村上春樹を思わせる、近くに潜む穴、顔のない人々、虚構の世界に生きている実感など、生と死への不安や恐怖を掻き立てられる。そして、貴方は不思議な読後感を反芻することになるだろう。2021/04/29
うっちー
269
直木賞、本屋大賞を受賞し、いよいよ恩田さんの境地に入っていく作品です2021/03/05
ウッディ
256
心に棘のように残っている新聞記事、二人の中年女性の心中を小説化した作家、そして自分の作品の演劇化される過程を見守る中で二人の背景や心の中を俯瞰する彼女。MとTという記号で表される登場人物、0と1だけを繰り返す章番号、実験的な小説であることはわかったが、心に響いてくるものがなく、誰にも感情移入できなかった。心中した二人が自分たちのことを小説にして欲しいかどうか、主人公の気持ちを思いやっての構成かもしれないが、読者の気持ちを置いてきぼりにした作品のような気がしてしまった。2021/09/12
いつでも母さん
220
これは何という括りの小説なのだろう。括りなんて関係ないのだな、きっと。このタイトルとカバーから連なる町の景色はそこはかとなく私を不安にさせる。この住宅の一つ一つに物語はあって、つまり事件もあってそれは私が『知った』ような気がしてる事が多いのだ。そんな感じを恩田さんは本作に練り込んでいて、自分の感情と並行して実在の人物を充てて描いているのが巧い。見ているようで見ていない、知らないようで実は経験してたりする。人の記憶の不確かさと脆い感情がどうにも怖い。『無い』ことがスイッチを押した?この二人は先の私なのかも…2021/03/09