出版社内容情報
私はどちらの性で、どんな立ち位置で、彼を愛せばいいのだろう――。異才の文藝賞作家が揺らぐ心身の性を大胆かつ繊細に描く会心作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
39
一昔前なら性的倒錯と言って不当に軽んじられてきたに違いない領域に切り込んだ野心作。性とは二元論ではなく、セクシュアリティもアイデンティティも、複雑で揺らぎ混じり合うものだということが認知されてきた現代だからこそ生まれた新時代の文学だろう。ノンバイナリー、バイセクシュアル、メトロセクシュアル、トランスヴェスタイト……、言葉では表現しきれないほど多様な性。性自認と言うと簡単だけれど、それは存在意義の問題で自由の問題にまでも及ぶ、ということを力強い筆致で描いた作品。もっと細かくもっと長く描いて欲しいと思った。2020/04/16
桜もち 太郎
15
女装に目覚めた市村ゆうき。妻の典子にはもちろん秘密である。本当の自分は何なのか、少しずつ自分の中に確かな核が出来つつあったが、性自認は男女のどちらなのか戸惑い続ける。不倫相手の愛未との関係、女装家として知り合った体を許し合うタケルとの関係、そして妻である典子との関係。最終的に彼は破滅に追い込まれていく。しかし、女として生きていきたいことを捨てきれない。自分的には女装には全く興味がないが、不思議と嫌悪感はない。テレビのマツコさんや、ミッツさんの影響もあるかもしれないな。しっかりとした文学作品だった。2023/06/11
さわ
15
lgbtqや性癖とも違うし、趣味が行き過ぎた何かかな。子なしなのが救いだけど、どうせなら結婚前にと思ってしまう。めっちゃキレイやったら許せるんかな〜?【図書館本】2023/05/22
真琴
14
不倫相手に冗談で女装させられた主人公の男性が、女装に目覚め、だんだん「女装をしている自分」が本来の自分自身で、そこに安泰を見出す。 性的マイノリティーの方に対する認知度は広まっているものの、実際に世間が受け入れているかというと、そうではないと思う。ちょうど昨日、「LGBTQの方は入居お断り」と不動産屋で断られた。理由は「男性同士が手を繋いでいる姿は他の住民に悪い影響を及ぼす」からだという理由。というニュースを見た。 主人公の男性がこれからどう生きていくか、続きが気になる。2020/12/24
shouyi.
13
市村という男の主人公が何が望みなのかどうなりたいのかよくわからなかった。世に女装趣味の人はいても、性同一障害の人とは明らかに異なる人々と思っていたが、後転的に別の性に目覚めたりするものだろうか。また、何となくそれに気づいても既婚者の市村がそのまま結婚を維持しようとしているのが理解できなかった。2020/12/20