出版社内容情報
自爆テロを思いとどまった女性、元ポルポト派少年兵、焼身自殺をした少女など、極限で生きる人々の姿を描くノンフィクション
内容説明
自爆テロを思いとどまったチェチェン人女性、殺戮に従事させられるロシア軍特殊部隊の兵士、元ポル・ポト派少年兵、焼身抗議したチベット人少女…生と死の交錯、愛と憎悪の坦堝を生きる人々を描く極限のノンフィクション!
目次
第1章 愛と洗脳、テロと祈り―「復讐」から逃れたチェチェン女性
第2章 「悪魔」と呼ばれた男―元ロシア軍特殊部隊兵士の苦悩
第3章 母たちの選択―ベスラン学校人質事件を生き残る
第4章 愛を知ったのは処刑の日々の後だった―ポル・ポト派の元少年兵
第5章 他者のために炎となる―焼身抗議を遂げたチベットの少女
第6章 私が死んでも言葉は残るでしょう―強いられた沈黙を破るアフガン少女たち
第7章 「砂漠の平和が好きだ」―グアンタナモからの生還
著者等紹介
舟越美夏[フナコシミカ]
福岡県生まれ。1989年上智大学ロシア語学科卒。共同通信社入社。2001年から08年の間にプノンペン、ハノイ、マニア各支局長。虐殺や元兵士、女性などを主要テーマに、アジア、アフリカ、ロシア、欧米を取材。2019年7月共同通信社退社。ポル・ポト派最高幹部を取材した『人はなぜ人を殺したのか―ポル・ポト派、語る』(毎日新聞社)で平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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クリママ
49
チェチェン紛争で家族を失い自爆テロを考えた女性、ロシア軍特殊部隊の兵士、ポル・ポト派の少年兵、中国の弾圧に焼身抗議したチベット人少女など、7章からなるノンフィクション。著者は共同通信社の記者。人は権力と手に入れると残虐になり、末端の人々は辛い思いをし続けている。それが世界の現実なのか。惨い体験をさせられた当事者から直に聞き取ったものであることは貴重だが、辛すぎることは語ることができないのだろう、具体的なことが詳細には書かれていないようで、ただ遠い海外の出来事として読んでしまうところがあったのが残念だった。2021/03/04
pohcho
43
元共同通信社記者による極限での生と死を描いたノンフィクション。新学期が始まる日、親戚の子と一緒に学校に出かけたはずの普通の女の子が市場で抗議の焼身自殺とか、幼い頃から兵士として育てられ、10歳で初めて人を処刑したとか、もう言葉も出ない、壮絶な世界があるんだなと。特にグアンタナモの話はアメリカがそんなことをしていたのかと、とてもショックだった。恐ろしい・・。ただ、極限の世界でも、人の善なる部分がちゃんと描かれているのが救い。とても読み応えがあった。2019/09/18
グリーンクローバー☘
25
ルポ。う〜ん。結局権力のない者たちが権力者たちに洗脳されたり、虐殺する加害者に仕立てられたり…。子どもも環境があまりにも悪過ぎると親に甘える事よりも助け合うとか…。心が死んでいる人多くて…。平和を願い謳っても戦争は無くならないんだよなぁ…。上層部の者たちが自らの体を使い戦えばいいのに…。2020/03/13
ちゃま坊
20
ロシアとウクライナの戦争で、戦死したロシア兵にチェチェン人がいたのをツイッターで知った。なぜ彼が最前線にいたのか気になった。この本を読むと、どうやら東欧の民族や宗教の歴史が複雑に関係しているらしい。プーチン大統領はチェチェン紛争で報復の連鎖が続くことを学習したはず。なぜまた繰り返すのか。悲惨な自爆テロや学校人質事件はまた起こるかもしれない。チェチェン、ポルポト、チベット、タリバンと近年の紛争と人権問題を取材したノンフィクション。2022/03/18
ゆき
19
家族を奪われ悲しむ女性に復讐心を煽り自爆テロをそそのかすのは、同じく愛する家族を殺された同胞だった。おそらく崇高な理想を掲げていたはずのポルポト派は少年に銃を持たせ自国民を殺させた。だが殺戮した側の者であっても個々であれば普通の人なのだ。なのになぜそれが国や組織になるとどこまでも残虐になれるのか。人間の抗えない性なのかとも思った。本書で「憎しみは頭の中で敵に力を与える。敵は強大になり自分はその奴隷になる。今重要なのは自由なのだ」と書かれていた。あ~そうか、と思った。簡単な事ではない。でも忘れないでいたい。2020/08/17