出版社内容情報
MIT仕込みのノウハウで管理された職場から逃亡した男に襲いかかる正体不明の暴力。怒涛の笑いと爽やかな感動を誘う著者最高傑作。
内容説明
パートタイムで働く男に次々と襲いかかる正体不明の暴力。NHKのビデオテープ紛失事件、アウトドアショップでの店員との諍い、スクランブル交差点で遭遇したサポーターの狂乱と警官からの痛打…。この悪夢に終わりはあるのか!?絶望を生きる男の悲劇的な人生が怒涛の笑いと爽やかな感動を誘う、中原昌也の最新作。「中原昌也の世界」を巻末に特別収録。
著者等紹介
中原昌也[ナカハラマサヤ]
1970年、東京都生まれ。「暴力温泉芸者」名義で音楽活動の後、「HAIR STYLISTICS」として活動を続ける。2001年『あらゆる場所に花束が…』で三島由紀夫賞、06年『名もなき孤児たちの墓』で野間文芸新人賞、08年『中原昌也 作業日誌2004→2007』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
澤水月
17
ラルフローレンにゲシュタルト崩壊させられる(笑)! 外しに次ぐ外し、洪水のような体言止めとクリシェの反復…裁縫の「返し縫い」のようにズレ切るかと思えば少し戻り他の章と繋がりが見え、絶妙なグルーヴの波に陶酔させられ、かつ爆笑した。本人の表紙装画、椹木・青山・小山田3氏の寄稿、他の著書告知など含め本1冊そのものがアート。澱むのでなく進んでいく感じを行間に見て嬉しくなる。この本読めば十分トべるから不純物混じり気なし、お粉いらないな…など煩い世情も思いつつ2019/04/06
Bartleby
12
悪夢のような短編集。各編にわりと強引なリンクが張ってあってちょっと可笑しい。物語の筋はめちゃくちゃなのに、馬の調教についてのかなり詳しい方法が書かれていたりして、なぜかぐいぐいと読まされた(別の本からの引用だろうか? この作者ならやりかねない)。ときどき繰り返される同じ文が、いっそう悪夢感をかもしている。どのページから読んでも、楽しめる、ここでしか味わえない、小説の廃墟。面白いのに、なぜ面白いのかがわからない。2022/09/25
田中峰和
8
夢の世界のようで、実はタイトルのように死の世界なのか。わたしはランニング中に黒いトラックが群衆に突っ込むのを目撃するが、運転手は出てこない。多くの人々を襲う死、そしてわたし自身も死んでいるのではないか。そして無関係のようで次の物語にリンクする作者の工夫もみえる。19歳で上京しミュージシャン兼俳優で成功する福田雅治は、もちろん福山雅治のパロディ。回転寿司屋でわたしが蘇生させた中年女が、なぜかその福田邸に忍び込み高価なギターを破壊する。実話そっくりだが、ガス栓を開け爆発させスターを殺害。死の夢が想像を拡げる。2019/09/18
東雲
8
これ、僕のオススメ作家さん、と手に握らされたのでまぁ読んでみるかと思って購入しましたが……。鞄を電車に忘れて他にすることが何もない状態じゃなかったら読了できなかっただろうな。匙を投げて飛距離を競う大会があったらぶっちぎりで記録更新できる。描写は好きな部類なのに一体どうしたらこうなるんだ…。話がなくて無意味な体言止めと反復法で胸焼けと胃もたれを起こして胃に穴が空きそう。一体何を読まされているんだろう……。ファンの方が読んだらまた違うのかもしれないけれど、初見の人間に勧める本ではなかったことは確か。2019/05/18
yozora
7
ぐいぐい引き込まれて読んだ。読み終えるのが勿体なく思えるほど。ジャパニーズポップとヌーヴォロマンの融合。中原昌也の底力を感じた。驚くほどに後にはなにも残らない。2022/02/11