出版社内容情報
没後20年にして新発見された詩40数篇収録。詩人としての類い稀な才能を証す貴重な作品集。手書き原稿も掲載。解説・池澤夏樹。
須賀 敦子[スガ アツコ]
著・文・その他
内容説明
30歳の日々、ローマでひとり呼びかけつづけた「あなた」への魂のことば―没後20年にして新たに発見された詩稿は、須賀敦子が詩人であったことをあきらかにした。祈りと慰めの韻律は、静かに、そして深く、心をゆるがす。巻頭口絵にて手書き原稿収録。
目次
Expandi manus meas ad te
(おかあちゃまじかんってどこからくるの?)
(けふはそらのあをい)
(窓のしたに)
(あゝこのひかりを)
(これほど空があをくて)
(アカンサスの叢から)
(れんげが咲いて)
(わたしの/いづみは)
(もうひとつ)〔ほか〕
著者等紹介
須賀敦子[スガアツコ]
1929‐1998。兵庫県生まれ。聖心女子大学卒業。1953年よりパリ、ローマに留学、その後ミラノに在住。多くの日本文学をイタリア語に訳して紹介する。71年帰国後、慶應義塾大学で文学博士号取得、上智大学比較文化学部教授を務める。91年、『ミラノ 霧の風景』で講談社エッセイ賞、女流文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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カフカ
51
ローマ留学中の1959年1月から12月に書かれた詩が没後発見され、書籍化された本。 主に神にあてて綴った詩が多いが、特定の宗教を信仰していない私にも響く言葉が沢山。 繊細で瑞々しい感性を持ち、それを美しい言葉で綴ることのできる方だったのだな。2023/08/30
aika
48
人生の途上での迷いや孤独を内に抱え、神を魂で希求するひとりの女性、ひとりの信仰者としての須賀さんの生身の姿が目の前に顕れてくるようです。書かれた地は、生まれ育った日本でも、挫折したフランスでもなく、その果てににたどり着いたイタリア。この詩はローマにいたからこそ書けて、ローマにいたからこそ書けなかった。「もたぬことは、とびたつことだと。」渡り鳥のように身も心も日本と外国を、現実と文学の世界を行き来し、人間と文学という営為に厳しく温かい眼差しを注ぎつづけた須賀さんの輪郭にそっと触れたような気がしました。2019/12/31
なる
46
イタリア文学の翻訳者として第一人者だったそうで、在伊時代に綴られた詩を集めたもの。といっても巻末で池澤夏樹が触れているように、たった1年間しか作詩されておらず、生前に発表されることもなかった様子。カトリックの洗礼を受けていることから作中でもその影響が垣間見える。稀にその対象が神か人か、読む側に委ねる曖昧さを持っていてそれもまた心地いい。美しくて透明な言葉がひらひらと踊っていて心が連れ去られる。恥ずかしながら存在を知らなかったけれど、これほど寂しくて凛とした言葉を綴れるのなら、もっと詩に触れてみたかった。2021/05/03
メタボン
41
☆☆☆★ 習作のようで詩としての魅力は今ひとつ。しかしエッセイに見られるようなみずみずしい言葉に須賀敦子の世界を感じる。(わたしの いづみは)(夜毎くらがりに わたしはすはって)の2編は、私の好きな伊東静雄に通じるリズムがあって好きだ。「同情」は宮沢賢治っぽくて良い。2019/09/07
紫羊
38
イタリアに留学し、ローマに暮らし始めた翌年に書かれた数十編の詩。あとがきにもあるように、どこかリルケを思わせる詩もある。短い詩ばかりだが、痛々しいほどピュアな感性に溢れている。2018/04/23