出版社内容情報
1974年、連続企業爆破事件の真実とは?――犯行グループが事件へと至る軌跡、公安警察との攻防、収監後の内省を峻烈に描く。
内容説明
一九七四年、三菱重工をはじめとした連続企業爆破事件が発生し、翌七五年公安警察によって容疑者のうち九名が逮捕される。東アジア反日武装戦線を名乗る彼らは、なぜ過激な闘争に身を投じたのか…事件を巡る公安警察との駆け引きや逮捕前後の動き、そして収監後の内省の日々に寄り添うことで浮かび上がる彼らの素顔―最も苦しんでいる人々の側から思考すること、アジアの人々の側から思考すること、そしてその帰結として生まれた“反日思想”の核心。テロリストとして一面的に報道された大道寺将司と彼らグループの真実に迫る傑作ノンフィクション。
目次
第1章 死の機会を逸して
第2章 釧路・大阪・東京
第3章 狼の誕生
第4章 都内非常事態宣言
第5章 虹作戦
第6章 死刑宣言
著者等紹介
松下竜一[マツシタリュウイチ]
1937年、大分県中津市生まれ。68年『豆腐屋の四季』でデビュー。82年『ルイズ 父に貰いし名は』で講談社ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マリリン
44
三菱は失敗であっても被告人たちを日本は裁けるのか? 東アジア反日武装戦線「狼」班による三菱重工爆破等について書かれたノンフィクション。一般報道とは一線を画した内容が衝撃的だった。桐山襲『パルチザン伝説』を読み、彼らが何故行動を起こしたのか知りたかった。侵略・植民地支配・強制連行、経済侵略によりGNP大国と化した日本。やったことの結果だけみて裁くのではなく、歴史的流れや戦い続けてきた人柄や背景を...。拘置所での人権侵害的処遇は暴力でしかない。知らなかった彼らの心情と事件の側面を知ることができた。 2024/03/17
おかむら
38
1974年の三菱重工本社爆破事件を始めとする連続企業爆破事件。東アジア反日武装戦線のノンフィクション。最近あさま山荘、よど号と昔の過激派の本を読んできて、次はコレ。非常に面白い!70年前後の学生さん達の真面目さと幼稚さと上から目線がイタイ。本気で革命。今はテロリストって遠い国の話だけれど、当時は日本国内がこんな感じだったのかー。ただ、彼らの主張は、今大層右寄りになってる風潮の中では、真っ当に思えてしまう。そういえば門田隆将がこの時間を公安側から書いたノンフを以前読んだけど、また読み直したくなったー。2017/10/06
竹園和明
35
三菱重工本社爆破事件を起こしたテロ集団の中心人物・大道寺将司があの惨劇を引き起こすに至るまでを追ったルポ。この男、根っからの荒くれ者では決してない。親思いで正義感が強く、アジアの貧困国の為に出来ることはないかと考える生真面目な男。そのアジアに進出する日本企業は自社の利益のために各国の人々を蹂躙していると考えるに至り、彼らに鉄槌を下すべく武力制圧の方向へ進む。繁栄の陰で涙を流す人々を救いたい想いがどこかでデフォルメされてしまった悲劇ではあるが、逮捕後の我が子を見守る両親の姿があまりにも不憫すぎる。2018/09/22
かふ
20
著者はもともと革命よりも生活が大事という豆腐屋だったのだが、商売が挫折してその根本を考えると社会悪があるというのでフリーのライターになった。その著作『豆腐屋の四季』を読んだ大道寺が著者に興味を持って連絡してきたのだという。著者は革命思想よりも大道寺と母の関係について深く掘り下げている。もともと日本人は心情左翼的なところがあったのだが。爆弾テロリストや赤軍派のリンチ事件などでそいう心情も無くなっていく。著者が大道寺の犯罪を肯定することは出来ないのだが母親の苦しみは理解できる。2024/10/07
Satoshi
12
桐島聡逮捕からの病死のニュースを見ながら、東アジア反日武装戦線について知らないことが多いと思い、本書を購入した。日本帝国の東アジアでの加害の清算が大企業への爆弾テロだったのだろうか、もっと異なる方法があるのではと思いながら読み進める。三菱重工爆破では死者が出たことで動揺し、自殺用の青酸カリを持ち歩くなど、そのアンビバレントな純粋さが痛々しい。2024/02/24