出版社内容情報
73人を言葉だけで死に追いやった殺人者が、怪物〈忌字禍〉を滅ぼすために召還される。表題作他、飛浩隆10年ぶり待望の作品集。
飛 浩隆[トビ ヒロタカ]
1960年島根県生まれ。島根大学卒。大学在学中に第1回三省堂SFストーリーコンテストに入選。『象られた力』で第26回日本SF大賞を受賞。著書に『グラン・ヴァカンス』『ラギッド・ガール』。
内容説明
星雲賞受賞作二編を含む、今世紀に発表された読切短編のすべてを収録。最先端の想像力、五感に触れる官能性、飛浩隆作品集。
著者等紹介
飛浩隆[トビヒロタカ]
1960年、島根県生まれ。島根大学卒。1981年、「ポリフォニック・イリュージョン」で第1回三省堂SFストーリーコンテストに入選、「SFマガジン」に掲載されデビュー。2005年、短編集『象られた力』で第26回日本SF大賞を受賞。2007年、短編集『ラギッド・ガール廃園の天使2』(すべてハヤカワ文庫JA)で第6回センス・オブ・ジェンダー賞大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
446
表題作の中編と6つの短篇を収録する和製SF作品集。初出誌は様々だが、中には「現代詩手帳」などという異色のものも。構成やスタイルも、一見バラバラ。もっとも、これは意識的にいろんな方法を試みた結果だろう。世界構築で目を引くのは巻頭に置かれた「海の指」だが、この作品を含めてSF特有の無限への拡がりに限界があるように見える。その原因はひとえに文体表現の通俗性にあるように思う。読者の(少なくても私の)想像力を見えない空間に向かって羽ばたかせてくれないのだ。あるいは、作者の文体との相性が良くないのか。2020/10/18
あも
102
面白いかどうかよりまず、読む価値があると伝えたい。音楽的で映像的なのに文章でしか表現できない世界。文字の力、一個の人間が持ちうる想像力の可能性にワクワクせずにいられない。地球の大半が海(物質を溶かす粒子)に覆われ、海は人類に残された僅かな陸地を奏で、変容させる。星を切り取った窓を所有し、宇宙の夢を見る。世界を埋め尽くす言葉は、電子の海に溢れ詩になる。実体から切り離されたイマジネーションの地平。優れた理論が美しいように、機能を極限まで追求した装置が美しいように、ある点まで到達したSFは詩であり文学だ。感服。2019/07/01
ちょき
85
素晴らしい。飛さんの作品では「海の指」が過去に読んだことがあったがあらためて圧倒的で独特の概念的世界観があった。それらの独特な圧倒的世界観が氏の特徴であり、「星窓」にしろ表題作の「自生の夢」にしろ、脳が刺激されるとともに、己の想像力の未熟さにも気がついてしまう。なお、この小説のように人類絶滅とは行かないまでも、文字情報の蓄積が進み人工知能が発達していく未来、そのうちドストエフスキーや夏目漱石の完全オリジナル新作なんていうのもありそうではある。いい作品に出会った。今年も良い年になりそうだ。2017/01/09
Mumiu
76
伝え合うための言葉、記録するための媒体。目の動きなどで感情や状態を伝えることもできるようになってきている。少し未来はどう伝え合っているのだろう。未来を語ると詩のように感じる。そんな未来がちりばめられた短編集。2017/02/26
harass
68
寡作SF作家の待望の短編集。あとがきのノートをみるとこれまで10年間の単行本未収録作品を集めたものらしい。アイデアと文章力の優れた作家でこれこそSFというビジョンを堪能できる。星雲賞受賞の表題作は、登場する忌字禍(イマジカ)から中島敦文字禍のオマージュなのは明白。語られる科学技術のアイデアが現実の情報社会に生きる我々には、そこまで遠くない現実味を帯びているように感じる。少しSFに慣れた人向けかもと。おすすめ。2017/03/03