出版社内容情報
勝って、いかになる。殺して、いかになる……それでも武蔵は巌流島へ渡る。迷いと悔いに揺らぐ殺人剣の神髄を描き、鬼気迫る傑作!
【著者紹介】
1959年新潟県生まれ。『死亡遊戯』でデビュー。'98年『ブエノスアイレス午前零時』で芥川賞を受賞。『箱崎ジャンクション』『波羅蜜』『武曲』など著書多数。46歳の誕生日から剣道を始め、現在、四段。
内容説明
迷いと悔いに揺らぐ宮本武蔵の、もうひとつの巌流島。芥川賞作家が迫る、殺人剣の真髄!
著者等紹介
藤沢周[フジサワシュウ]
1959年、新潟県生まれ。法政大学文学部卒業。書評紙「図書新聞」の編集者などを経て、93年「ゾーンを左に曲がれ」で作家デビュー。98年「ブエノスアイレス午前零時」で第一一九回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
jam
79
観念に始まり、終わる。宮本武蔵を綴った作品はいくつもあるが、吉川英治は他と一線を画す。格調高い文章で綴られた生涯は、最期の1行に凝縮し、武蔵と共に到達した作者の平原があった。そして本作も、猛りと迷いの身悶えのなか、武蔵と作者は「無常」の境地に到った。わずか7歳の幼い生命を奪った武蔵。その刃は極限の優しさで微塵の痛みさえ与えなかったろうが、己が心に返す刃は、深い淵へと武蔵を落とす。終盤、巌流島での小次郎との決闘の後、船頭と海へ逃れ、やがて冒頭の流離う魂と化す。作者の心象具現であり、武蔵、墨染めの書であった。2016/05/23
雪風のねこ@(=´ω`=)
74
お膝元の播磨なのに伝記を読むのは初めてという不届き者。禅問答に似ているのは、人を殺すことと剣を極めることの矛盾点を突き詰めているからだろう。そんな物語を読んでいると、霊体となってそのさまを眺めているかのような生々しさを感じる。時空を斬ったかのような構成は剣で斬られたかのように錯覚する。武蔵、といえば武骨で粗暴なイメージを持っていたけれど、それこそ藩の計謀の証なのだろう。豪胆なようで小心…繊細。感性が豊かで思慮深いといえる。剣を抜き放った時の、鋼が匂い立つ、という感覚は本当に感じ取っていると思うな。2016/06/08
ちょき
41
形容するのも憚られるがその表現力たるや芸術の域。吉岡又七郎殺しの苦悶、愚独老師との問答を経て小次郎との決闘へと向かう武蔵。虚構と現実の情景の変わり目に翻弄される。井上雅彦氏の「バガボンド」は読んだことがないが、世界観は似ているのではないかと思った。読書力が鍛えられる。2016/03/25
aloha0307
19
武蔵が佐々木小次郎と決闘するまでの数日間 剣 斬ること それ自体の意味が混濁し分からなくなってゆく...客観的事実には殆どふれず、ただただ内面の葛藤をリアルに描く(ドフトエフスキーを言及したのには驚いた)。終幕は壮絶たる混沌 勝ったのか、負けたのか...2016/07/23
kyon
14
以前途中までしか読めなかった本を年内に読んでしまおうと。宮本武蔵を良く知っている人が読んだら楽しい本かなー。知識のない私には、少しマニアックな感じがしました。巖流島に向かう辺りまでがメインのお話しでした。他の宮本武蔵の本を読んでから、また読み直したい本です。アメトークの読書芸人で少し取り上げられましたね。2016/12/30