文芸の本棚
夏目漱石『こころ』をどう読むか

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  • サイズ A5判/ページ数 227p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784309022895
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0095

出版社内容情報

刊行100年。永遠の問題作はいかに読まれうるのか。東浩紀、大澤真幸らのエッセイの他、過去の『こころ』論をベストセレクション。

【著者紹介】
1955年生まれ。早稲田大学教育学部・総合科学学術院教授(日本近代文学)。『秘伝中学入試国語読解法』(新潮選書)、『教養としての大学受験国語』(ちくま新書)、『漱石と三人の読者』(講談社現代新書)など。

目次

『こころ』はどう読まれてきたか(石原千秋)
対談(文芸漫談夏目漱石『こころ』を読む(奥泉光×いとうせいこう)
こころ夏目漱石(水村美苗×小森陽一) ほか)
エッセイ(少数派として生きること(東浩紀)
喉に引っかかった魚の小骨のような疑問(大澤真幸) ほか)
講演(漱石の多様性―『こゝろ』をめぐって(柄谷行人)
『こころ』(吉本隆明))
評論(淋しい人間(山崎正和)
師弟のきずな―夏目漱石『こゝろ』(一九一四年)(作田啓一) ほか)
『こころ』をこれからどう読むか(石原千秋)

著者等紹介

石原千秋[イシハラチアキ]
1955年、東京都生まれ。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。専攻は日本近代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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trazom

107
「こころ」に関する古今の解釈のベストセレクション。近代的自我の確立、知識人の苦悩という小宮豊隆流の漱石論をもとに、罪や死の意識や明治の精神に注目するのが正統的な読み方だろうが、その後「Kはエゴイスト」「未亡人と静は策略家」「青年と先生はBL関係」「「こころ」は青年(私)の遺書」のような幅広い解釈が面白い。私は以前、石原千秋先生の本で「先生の死後、青年と静が結ばれた」という説に衝撃を受けたが、「青年・先生・Kには固有名を与えず、静には与えた」(押野武志先生)を踏まえ、静の立場になって再読してみたくなる。2022/10/14

kaoru

68
「こころ」に関する論考・エッセイ・座談を集めた一冊。有名な小森洋一の「奥さんと『私』が結ばれる説」をはじめ「Kはナルシスト」「先生と『私』の出会いはBL」「奥さんは策略家」など実に幅広い解釈を許す作品だと感じる。作田啓一の「個性の個人主義が生まれた明治期に、漱石は欲望の個人主義がすでに始まっているのを見抜き」「個性の個人主義が滅びる危機感を抱いた」との説が一番腑に落ちた。女性嫌いと言われた漱石だが、水村美苗(『続明暗』)など現代の女性作家の一部は漱石を敬慕しその文学的系譜を継いでいる。中学時代に「先生」→2023/09/28

Maybe 8lue

39
読む人によって、こころは違うんだな~と比べながら。欲望(他人からの承認)と欲求(自分本位)の違いには「なるほど」自分にも先生のような欲望はあるのかも。軍旗を奪われた時に死ななければならなかった乃木将軍、自分の信条から脱線した時に死ななければならなかったK、死ななければならない時がきた先生。Kを尊敬していた先生が私に尊敬される側になり、人物の立ち位置がどんどん変わっていくのはおもしろいですね。けれども、やはり「失敗作」プロットはしっかりしてないし、突っ込み所も多すぎる。が、これは「・・・私」の手記だ。成程!2015/01/10

スイ

12
「こころ」についての対談と少し軽めのエッセイを複数収録。 のっけから奥泉光氏&いとうせいこう氏が「こころは絶対失敗作」と飛ばしている。 対談はどれも面白かった。 コラムは、うーん、好みの問題もあると思うが、質の差が激しいように思えた。2016/11/24

ひつじねこ

6
様々な論考やエッセイや対談が収められた批評集。作品を読むとは作品を自分の中で腑に落ちる物語に変換することであり、その意味でこの本は多様な物語に満ちている。編者の力量に感心する。覚えておきたいのは「他者に欲望が喚起される」前段階だ。教育は、それまでのコミュニティにいなかった人間を生み出す。漱石的主人公の多くは高度な教育を受けており、畢竟周囲への違和を抱く人間が仕上がる。それが天然の欲望を封じ込めていた。そのような人間が近代日本に多くいたのではないか。そうした過去との断絶による不均衡が、現代日本の根幹にある。2016/11/17

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