出版社内容情報
生者と死者が共存する土地・上野公園で彷徨う一人の男の魂。彼の生涯を通じて柳美里が「日本」の現在と未来を描く、傑作中編!
【著者紹介】
1968年生まれ。93年『魚の祭』で岸田國士戯曲賞を受賞。94年『石に泳ぐ魚』で小説家としてデビュー。96年『フルハウス』で泉鏡花賞・野間文芸新人賞、97年『家族シネマ』で芥川賞を受賞。近著に『自殺の国』がある。
内容説明
東京オリンピックの前年、男は出稼ぎのため、上野駅に降り立った。そして男は彷徨い続ける、生者と死者が共存するこの国を―。構想から十二年、柳美里が福島県に生まれた一人の男の生涯を通じて“日本”を描く、新境地!
著者等紹介
柳美里[ユウミリ]
1968年生まれ。高校中退後、東由多加率いる「東京キッドブラザース」に入団。役者、演出助手を経て、86年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。93年『魚の祭』で岸田國士戯曲賞を最年少で受賞。97年『家族シネマ』で芥川賞を受賞。著書に『フルハウス』(泉鏡花文学賞、野間文芸新人賞)、『ゴールドラッシュ』(木山捷平文学賞)他多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
541
最初から最後まで、そして読後にも残る寂寥感。ほんとうに寂しさの表象に満ちた物語だ。37年間の結婚生活を営みながら、一緒に暮らしたのはせいぜい1年間くらい。そうしたくてそうしたのではない。それが出稼ぎの現実だったのだ。本書には「あとがき」以外に原発は出て来ないが、出稼ぎと原発を受け入れることの選択とは表裏一体のものだった。それは、そのまま東京と東北との関係を物語る。片やオリンピックに沸き立ち、そしてその底流には土木工事に従事する被災地からの出稼ぎ者たちがいる。柳美里はそこに痛切な違和を感じて、これを書いた。2016/03/25
鉄之助
500
主人公は、上野駅のホームレス。「上野恩賜公園のホームレスは東北出身者が多い」 実感としてよくわかる。主人公は先の天皇と同い年で、長男は今上天皇の生まれた日に21歳で死ぬ。聖と俗が微妙に絡み合って壮大な物語が織りなされる。この小説が、いま改めてアメリカ人に評価させるのも、「時代」のなせる業か? 個人的には、1本筋を通して「上野駅」を描いてほしかった。もう少し上野駅のカタルシス、湿度感が出ていたら、もっと良かった、と思った。2024/11/01
starbro
350
全米図書賞受賞おめでとうございます(V)o¥o(V) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201119/k10012720071000.html https://www.youtube.com/watch?v=4JtEi2YnQVM 感想は書いていませんでしたが、6年半前に読んでいました。残念ながら内容は、ほとんど覚えていません(笑)2014/04/02
美紀ちゃん
250
読むのが辛かった。 孫娘の麻里と一緒に暮らしていけばよかったのに。 なぜ家を出たかな? いつ終わるかわからない人生を生きていることが怖いから? そんなの誰もが死ぬのだし。 共感はできなかったけれど、上野公園に住む人たちの生活がわかった。 日本は豊かな国だと思っていたが、まだまだこういう現状があるのだと思う。2021/05/13
Makoto Yamamoto
218
チョット前の上野公園にはホームレスの青いビニールを屋根にした多くの小屋があり、異様な雰囲気だった記憶がある。 それを思い出しながら読み進んだ。 何ともツキのない人生を送っている主人公、息子、妻、孫娘。。。 淡々と独白調で書かれていて、辛さだけが残った。2021/06/13