出版社内容情報
悲しみとは、単に死者の不在を嘆くことではなく、むしろ死者が私たちに近づく合図である。清冽なる書『魂にふれる』の先を描く決定版
【著者紹介】
1968年新潟県生まれ。慶応大学仏文科卒業。批評家。「三田文学」編集長。「越知保夫とその時代」で三田文学新人賞評論部門受賞。著書に『井筒俊彦』『魂にふれる』『池田晶子 不滅の哲学』他。
内容説明
生の営みの基層に響く「死者」たちは我々に何を語りかけているのか?気鋭の思想家による、静謐なる思考。
目次
1 不可視な同伴者(生きている死者;不可視な同伴者と涙に洗われる希望;呼びかける死者と見えざる悲しみ ほか)
2 コトバの訪れ(薔薇のことぶれ;沈黙と生ける死者;意中の人―池田晶子のこと ほか)
3 創造する想像(創造する想像;大震災と死者の詩学;死の彼方 魂の深み―フランクルにおける不可視なもの ほか)
著者等紹介
若松英輔[ワカマツエイスケ]
1968年、新潟県生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒。批評家。「越智保夫とその時代―求道の文学」で第14回三田文学新人賞評論部門受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
119
東日本大震災後の社会に真摯に向き合った評論集。「生きている死者」、「死者は存在している」といった死者が我々共に今ここにいると言う表現が繰り返し出てくる。オカルトや宗教ではなく、確信として死者の存在が語られることに、深い感動を覚えた。震災で亡くなっていた何千何万もの人々のことを、忘れたくないという強い意志が作者を動かしているのだろう。それからたとえ人は死んだとしても、その人が残した言葉を読むこと(思い出すこと)で、死者の存在を感じられると言う著者の祈りにも似た想いに心が震えた。2014/10/03
Gotoran
45
死者を語らう、東日本大震災、水俣病で亡くなった人たち、残された人たちについて、石牟礼道子、池田晶子、柳宗悦、安岡章太郎、小林秀雄、フランクル、いとうせいこうの文章を通して沈黙の中から言葉を浮かび上がらせる。引用、文章表現、論理展開等、深い洞察に満ち、癒しの力に溢れている。死者たちへの語りかけという視点で貫かれている。詩的な叙情性と論理性が絶妙に表出されている。心に響く新たな洞察に気付き、実に魅力一杯の作品。このような若松のエッセイに触れあえたことに喜びを禁じ得ない。2018/09/30
みねたか@
30
大切な人を喪った悼みを抱える人たち、生者に思いを託して旅立った人たち。彼らに注がれる静かで力強いまなざし。いとうせいこうの「想像ラジオ」,池田晶子,V・E・フランクル,原民喜そして石牟礼道子の作品を取り上げて語られる「死者とともにある」ということ。特に石牟礼道子の「花の文を」に寄り添って語られる表題作は,魂の深みにそっと降りたっていくようなたたずまいで,これだけでもこの本を読んでよかったと思わせる内容。著者の作品は3冊目だが,この主題における一つの到達点と思わせる作品。2019/09/11
ぐっちー
25
表紙の志村ふくみさんの作品と、タイトルだけでもう胸を打たれる。様々な思想や哲学、文学を引用して死について、あの震災の後の世界について考える本。死者は遠くに追いやり忌むものではなく、姿は見えなくても近くに居てくれる人であると若松さんは何度も語りかける。淡々とした文体なのに、ゆっくりゆっくり凍土に温もりを伝えるような優しさが滲んでくる。2017/02/28
なおみ703♪
15
志村ふくみさんの優しくて静謐で、自然から命をいただき紡いでいくイメージの染め物が装丁になっていてとても美しい。志村さんは色と織りで死者を表現している。死者とは、この世の生を終えたあとも生き続ける「生きている死者である。」2021/10/04