内容説明
19世紀末―かのヴィクター・フランケンシュタインによるクリーチャー創造から約100年、その技術は全欧に拡散し、いまや「屍者」たちは労働用から軍事用まで幅広く活用されていた。英国諜報員ジョン・ワトソンは密命を受け軍医としてボンベイに渡り、アフガニスタン奥地へ向かう。目指すは、「屍者の王国」―日本SF大賞作家×芥川賞作家が挑む渾身の書き下ろしエンタテインメント長編。早逝の天才・伊藤計劃の未完の絶筆が、盟友・円城塔に引き継がれ遂に完成。
著者等紹介
伊藤計劃[イトウケイカク]
1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。08年、人気ゲームのノベライズ『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』とオリジナル長編第2作『ハーモニー』を刊行。09年3月没。享年34。没後、『ハーモニー』で日本SF大賞、星雲賞日本長編部門を受賞、その英訳版でフィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞
円城塔[エンジョウトウ]
1972年、札幌市生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2007年、『オブ・ザ・ベースボール』で文學界新人賞を受賞、同時期に『Self-Reference ENGINE』を刊行し、デビュー。『鳥有此譚』で野間文芸新人賞、『道化師の蝶』で芥川賞を受賞。早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
484
伊藤計劃の遺稿をプロローグとして、円城塔が本編を書き継いだ遠大な構想の物語。円城の文体は『道化師の蝶』よりもずっと平明だ。基本的には全編を通してアイデンティティが問われてはいるのだが、ここでは「個」としてのそれだけではない。人間あるいは人類全体にとってのアイデンティティ―すなわち人間だけが持つ(もちろん異論はあるだろう)「意識」とは何か、あるいはそもそも人間とは何なのかが問われ続けている。「生者」と「屍者」の2項対立を軸に、物語は『旧約聖書』から『フランケンシュタイン』へと縦横無尽に駆け巡るのである。2013/07/28
Koning
218
スチームパンクと見せかけつつファンタジー?的なんだけど、登場人物の名前から出て来る小道具の至るまで名詞でニヤニヤしてしまうという危険な小説。まさかMさんて教授じゃなかろうね?(汗。基本虚構の積み重ねとある種のパロディー的な組み合わせなんだけど、まさかのノストラティックまで引っ張りだしてやらかしてくれたのには脱帽。コリント前書を前の書だっけ?微妙な表記はあったけど、KJVだろうから明治訳の文語聖書引用でOKとか。2013/07/10
紅はこべ
197
歴史上実在の人物と物語上の架空の人物が共存する世界。007、ホームズ、フランケンシュタイン、ドラキュラ、風と共に去りぬ、カラマーゾフの兄弟といった様々な文学世界が背後にある。ここで描かれる屍者とはアシモフ定義のロボット的なゾンビか。世界観は攻殻機動隊に通じ、結末はヴィリエ・ド・リラダンの『未来のイヴ』を彷彿とさせる。読み易い文章ではなかったので(悪文ということではない)、読み終えるのに時間がかかった。エンタメというより哲学的。くたびれた。2015/06/25
そのぼん
182
屍者を甦らせることができる学術がある世界の物語でした。そこはかとない不気味さもあり、ややこしげな魔術もどきの科学の描写もあり、なんとも形容し難い居心地の悪さが最後まで付きまといました。2012/09/23
ガクガク
144
単純に「屍者と生者の闘い」の話と踏んでいたら、どんどん難解になって「意識」とか「言葉」とか、はたまた屍者化した生者とか、人の意識を乗っ取る「X」とか、ますます難解になり、もはやお手上げ状態。途中「屍者の3原則」が「ロボット3原則」と同じという辺りまでは楽しめたのだが…。登場人物も創作上の有名人物が総出演という感じで、予備知識が十分ならばより楽しめる設定。ちょうど『種の起源』を今読書中なので、チャールズ・ダーウィンが出てきた時には思わず苦笑。本人も墓下で苦笑しているに違いない。円城塔に再挑戦できるかどうか?2014/08/23
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