内容説明
トゥレット症候群に苦しみながら「みちのく鉄砲店」で中原中也賞を受賞した詩人はその日、仙台で被災し、一週間後、南三陸に帰った…親しい人たちを失ったとてつもない悲しみと震災の衝撃に耐えるために書かれた言葉たちがあなたの魂をつきさす。
目次
ざんざんと降りしきる雨の空に(ハレルヤ;走る;現状;Try again;孤独な角度 ほか)
化け物(化け物;恥さらし;体脂肪;グリーフワーク)
著者等紹介
須藤洋平[ストウヨウヘイ]
1977年12月7日宮城県本吉郡南三陸町(旧志津川町)生まれ。ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、その他の強迫性障害、重篤な対人恐怖症、うつ症状など様々な合併症と闘病しながら2006年刊の私家版詩集「みちのく鉄砲店」で第十二回中原中也賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
162
『トゥレット症候群』の作者の詩集。全てを飲み込んだ震災。被災者でも有る。作者のお兄様があとがきに、「醜悪をよすがにして生きてきた弟の7カ月。」と記してある。今、私の頬を濡らすのは涙なんかじゃ無いと、誰か言って。分かった様なふりをするなと。絶対的なものの前では、祈りも叫びも虚しい。『生きる覚悟』を決めた作者に勝る者はない。今頃の読書だが、教えて下さった読友さんに感謝です。生きなきゃね。2018/07/30
しいたけ
120
詩でここまでの衝撃を受けたことはない。表面の肌触りや毛並みの良さではない。人の胸に荘厳な聖堂の鐘をたたみかけるように鳴らしてくる。内に響く残響が消えず頭を揺らす。綺麗ごとではないのに美しいのだ。親しくしている人にトゥレット症候群に長年苦しむ人がいる。腕のいい大工だが、例えば市役所の改修工事をしていれば職員が慌てて「帰ってくれ」と言いにくる。利用者が奇怪な者がいるとクレームを言ってくるというのだ。著者の被災者としての生活も如何許りであったかと苦しくなる。彼が晒け出す傷に尊いものが光る。それを人は詩人と呼ぶ。2018/03/09
てんちゃん
42
宮城県に住む詩人であり、トゥレット症候群を持つ著者の、被災地に過ごすなかでの様々な思いを綴った詩集。『俺みたいな汚れが真っ先に死ぬべきだった』『なぜ俺が生き残ったのか』という苦しい自問を繰り返しながら、それでも生きることへの渇望も感じさせる。中原中也賞も受賞している著者の詩はしっかりした筆力も感じさせる。震災と詩と難病。これまでにない角度から綴られており、インパクトとある作品だった。2018/03/06
ケイ
38
図書館で題名にひかれ、手に取った詩集。読んでいるうちに震災関連だと知る。10代に発症した障害をかかえて生きてきて、震災で大切な人々を失い、たくさんの亡くなった人を目にし、打ちのめされた中で、心の底から絞り出してきたような言葉が胸に響く。何篇もないのに、何度も何度も読み返しているうちに、気がつくとうんと時間が経っていた…、という印象。2013/08/24
みねたか@
35
仙台で被災した南三陸の詩人。一週間後たどり着いたふるさとの無残な姿。 トゥレット症候群をかかえ「生きることへの葛藤や抑えられない衝動と隣り合わせの毎日,ぎりぎりの精神状態」で書き綴られた作品からなぜかドストエフスキーの世界を想起する。カラマーゾフの兄弟のアリョーシャのような純粋さで子供たちに語りかけ、自分が死ねばよかったという悔恨は自嘲的なスメルジャコフを思わせ、友の死に向き合う姿は悪霊のシャートフのように不器用で熱い。僅か70ページ弱20編の詩、苦しい中に瞬く希望と勇気。2019/02/08
-
- 和書
- おでかけ子ザメ7 7