内容説明
歴史の闇の中を生きた道鏡。梵語を話し、呪術による看病禅師として高い評価を受けていた一介の僧侶はやがて国の最高権力者になっていく。有数の知識や学識と呪禁力を兼ね備えた非凡な僧侶・道鏡のまったく新しい像を描く、会心作。
著者等紹介
三田誠広[ミタマサヒロ]
1948年、大阪生まれ。早稲田大学文学部卒業。1977年、『僕って何』を「文藝」に発表し、芥川賞受賞。以後、小説、評論、エッセイと幅広く活躍している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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読書ニスタ
34
道鏡をして、女たらしで政権を簒奪した悪いヤツとして描くのか、はたまた、実は真面目で後世の人に悪様に罵しられた者として描くのか、どっちつかずの作品だった。河内のラスプーチンとして、暴れてほしかった。2020/02/16
R
24
道鏡の出世していく様を描いた物語でした。まったく知識がなかったので、そういうものかと初の法王になる男の生き様に驚いていましたが、世間では相当の悪僧として知られているようで、そのテンプレを破壊するように新しい道鏡を描いた物語だったようであります。野心と仏教の真髄とにゆれながらも、上り詰めていく道鏡の苦悩と生き様が面白くて、かなり読まされました。孝謙天皇にそんな話があったとはと、この時代の面白さに触れられたよい一冊でした。2018/01/29
泥岳
5
恵美押勝を打倒するために幽閉されていた孝謙帝を擁立するが、統合失調症気味の帝に振り回される一行の話し。とまれ、非藤原で閣僚を固めようとしたら、学者か僧侶(そして武家)しか抜擢出来ない。道鏡や清盛はとかく悪し様に伝えられてきたが、これは藤原史観もとい不比等史観とも言うべき、日本人に植えられた思考回路なのだなあ、と。2017/09/30
a
4
そこまで道鏡は悪者じゃなかったのかも…というかそこまで影響力を持っていたのか微妙な気がした。歴史は勝者が描くものですからね!2013/12/04
晩成
4
天皇の地位を狙った極悪人というイメージの裏をかこうという小説家としての野心は感じられるが、史実(とされているもの)との整合性を保つため、道鏡の人物像がチグハグになっている印象を受けた。どうせなら、清廉な僧だったのが、権力を得るに従って悪人になっていく様を描いた方が良かったのではないかと思った。2012/11/01