内容説明
まだまだ読める、山口瞳。いろいろな意見、観察、身辺雑記。ときに厳しく、あるいは柔らかく、たまには揺れる。いずれにしても、背筋を伸ばして。林の中から聞こえてくる明るい声に心引かれ、耳を澄ます。そんな気持ちのエッセイ・コラム四十四本。単行本未収録エッセイ集。
目次
「江分利満氏」の文学観
八月十五日について
現代広告考現学
ギターとウクレレの海・伊豆
山本さんのいいつけ
ご亭主経営学
浪曲「天保水滸伝」
サラリーマンと原稿生活者
小説とは何か〔ほか〕
著者等紹介
山口瞳[ヤマグチヒトミ]
1926年、東京生まれ。小説家。寿屋(現・サントリー)で広告制作にたずさわり、後に作家生活に入る。1963年、「江分利満氏の優雅な生活」で直木賞受賞。1979年、「血族」により菊池寛賞受賞。『週刊新潮』の1963年12月2日号より始まった連載「男性自身」は1995年8月31日号まで31年9ヶ月、休載なく1614回続いた。1995年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hirayama46
4
以前に人生相談本を読んだときにも思ったことですが、山口瞳は戦中派なのだな……とこの本でも何箇所か感じました。それは単に昔ながらの価値観(執筆年代を考えれば当たり前なんですが)だけでなく、ものの見方に戦争の経験が色濃く出ているのですよね。全体的には軽いエッセイなのですが、そのあたりには重いものの存在をたしかに感じました。2022/07/29
中身はおじさん
4
当時、江分利満氏に衝撃を受けて、むさぼり読み、随分影響をうけた作家です。あらためて享年を確認して、驚愕。そんなに若かったのか!本書はさすがに時代に合わない箇所も散見されます。さりながら、深く深く心に潜り込んでくるのです。うん、変節せずに生きるのは、さぞ、困難な道であったでしょう。晩年のエッセイが、息が詰まるようであったのも、さもありなん。時にとんでもなく美しい文章を書く山口瞳、希望を描きだす山口瞳。怒り狂う山口瞳、軽蔑し落胆する山口瞳。東京百景 読み返したくなりました。2020/10/05
鬼山とんぼ
1
1963年以降のほぼ各年の作者のエッセイのアンソロジー。性格的にあまり好みのタイプの著者ではないのだが、ほのぼのとした味わいがあってその時代の雰囲気も良く伝わっており、さらさらと読めた。質、量から考えて、小説家というよりエッセイストなのだろう。2016/06/18