内容説明
雄大なスケールの人間ドラマ。飢餓と混乱の敗戦直後、災害と犯罪を結びつけた超大作。昨秋逝去した著者の豊かな遺作。
著者等紹介
水上勉[ミズカミツトム]
1919年福井県生まれ。1959年「霧と影」で作家活動に入る。61年「雁の寺」で直木賞を、71年「宇野浩二伝」で菊池寛賞を、75年「一休」で谷崎潤一郎賞を、77年「寺泊」で川端康成賞を、84年「良寛」で毎日出版芸術賞をそれぞれ受賞。2004年9月8日没
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
61
犬飼=樽見と確信を抱いた刑事たちは県を超えて彼の空白の過去を探り出す。そこから浮かび上がってきたのは生まれによって搾取させるか否かが決められ、助けもないが故に這い上がらなければならなかった悲痛な理由だった。世間の荒波に負ければずっと長男一家の搾取されて生きなければならない実情に凍り付く。そんな地域へ反旗を翻し、刑務所の改善を目指す篤志家・北海道では救世主となった樽見。だが自分の秘密を守る為とはいえ、八重や腹心の部下でもある竹中氏を心中に見立てて殺したのは、遺族や関係者の悲憤を考えると卑劣極まりない。2026/01/03
B-Beat
19
◎上下巻計約700Pの大作。上巻読了後の感想投稿も忘れて下巻を一気に読み切ったのはこの読メ登録後初めてのことではなかったろうか。戦後間もない食料も満足になかった時代。このような犯罪が起こった社会的背景を現代人から見れば悲惨としかいいようのない境遇にありながらも真摯に生きようとする女性を通して丁寧に描く。そしてその女性の行動を発端として追いつめる者と追いつめられる者との攻防が日本列島を半ば縦断して繰り広げられ、読む者が勝負あったかと思った瞬間にそこで暴露されるというか顕在化する真実の叫び。読めてよかった。2013/10/16
だい
10
薄暗くて寂しく几帳面で硬い文体は、清張を彷彿とさせて、懐かしく嬉しかった。推理小説ではあるが、優しく語りかけているようで心が温かくなる。今は罪を犯した者も真実を追い求めた者も、はかない時の中へ消えて行く。罪も涙もすべてをのみ込んだ海峡の暗く荒れた海がうかんでくるようだ。2016/04/26
akiko
8
今なら一瞬で辿り着ける真実に、自分の手足を使って気の遠くなる時間をかけてしか辿り着けない。現代を生きている私にはまどろこくて仕方ない。でも、だからこその重厚な内容になっている。想像した通り樽見は根っからの悪人ではなかった。彼だけではなく他の登場人物達にもある貧しさが悲しい。あとがきも含めて再読してよかった。2023/01/01
カープ坊や
8
主役二人の再会から始まった下巻。 やけにあっさりと謎が解き明かされていく展開は 上巻に比べると少し残念なれど 上下巻通じての戦後の混乱期の人物描写には感服2014/06/11
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