内容説明
世界という地獄を生き抜くために―。精神の極北の戦争が続く。14年におよぶ期間の単行本未収録作品6篇に書き下ろしの表題作(150枚)を加えた著者会心の短篇小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
22
「差別をする自由」が(その発話者の意図を超えた形で)トレンド入りする世界だからこそ、小説としてはやや拙さやぎこちなさも目立つにしろ本書を貫く哲学は再評価されるべきではないか。J・G・バラードや大西巨人を思わせる観念的で硬質な奇想と思考実験。差別される人間がそれを盾に力を振りかざす逆説とか、あるいは自らの人権を売り渡すほど過剰な「自由」を許すことのおぞましさとか、今読んでも実にアクチュアル。このまま図書館の片隅で埋もれさせるのは実に惜しい一冊だと思われる。なによりもまずタイトルが良いね。著者の新作を期待する2017/09/13