内容説明
常陸の山里、小生瀬の地へ急派された大藤嘉衛門は、悪い夢を見ているようだった。強烈な血の臭い、人影のない宿場―やがて「サンリン」と呼ばれる場から、老人、赤子にいたる骸三百余が見つかる。一体、この聖なる空間に何がおこったのか…。時は江戸初頭、古文書に数行記されたまま、歴史から葬り去られた事件の“真実”とは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
財布にジャック
67
歴史ミステリー、いやどちらかというとホラーかなぁ?しょっぱなから300人の死体の謎という設定に惹かれて引き込まれますが、のっぴきならない状況に、村全体がそして人々が徐々に追い込まれていく様が丁寧に書かれていて、作者の筆力に圧倒されっぱなしです。こんな凄い作家さんを今日まで知らなかったことを大変恥ずかしく思いました。読書メーターをやっていて、この作家さんを知ることが出来て良かったです。2010/08/23
ach¡
40
村人は何処へ((;゚Д゚))もはや序章から不穏な空気と血なま臭さが漂いまくりまクリスマス。。この救いの無さ…年末に読む本ではないざーます。時は関ヶ原から2年“戦のない世を迎えそれを維持していくことは戦と同じかあるいはそれ以上の労苦と惨とを要する”…いつの世も政治って奴はほんの一握りの人間のためだけに存在し、弱者を虐げる所業無情がクズい。当時のお百姓さん達が嘗めた苦汁が行間からほとばしり、ノーミン怒りの蜂起!へと流るる。そして何もかも救いがたい処へ向かう…実際に小生瀬(茨城県北部)で起きた凄惨な事件が題材。2016/12/24
TATA
33
飯島さんは「出星前夜」に続いて二作目。年代は多少違えど時代の変化に適応できなかった農民の悲劇という点で括れるかと。中身も重厚でしっかりと読めます、おススメです。三年ほど前に息子と袋田の滝を見に行き、月居山にも登りました。もう福島県がすぐそばの関東の北縁。歴史の闇は至るところにあるのかもしれませんね。次は「黄金旅風」を読もう、読友さんのおススメだったし、こちらは明るい作品かなと。2016/05/25
藤枝梅安
32
江戸幕府開府直後、北関東・現在の茨城県北部の小生瀬(現在の大子町小生瀬)という村は、伊達の勢力との境界にあり、昔から半農半武の生活を営んできた。 しかし、関が原の合戦で徳川家康が実権を握り、伊達の脅威がなくなるとともに、相次ぐ廃藩や大名の配置換えにより、この地も惣検地の対象となる。開花寸前の稲田から水を抜き、田を荒らしながらの検地に村人達は激しい反感を募らせ、役人達を暗殺する。その後村に入ろうとした検使をも殺害し、村全体が幕府に反抗するという事態。結果、村の住民300人余りが一人残らず殺害され、村は全滅。2010/08/24
藤月はな(灯れ松明の火)
31
装丁と序章で「すわホラーか!?」とビクビクしたものの世が変わり、その変化と自分たちの誇りの違いにに困惑する人々やその変化を押し付ける人々が共食いし合うように貶めあい、惨劇へと向かい、歴史が隠ぺいされた過程が淡々と描かれていたため、その遣る瀬無さが一層、募りました。戦の生み出す虚しさと悍ましさを知り、誰よりも人々の未来を慮って言動していた藤九郎は誰よりも聡明で悲しい存在だと思いました。多分、彼は愚鈍だったり、立場が農民だったならば幸せだったかもしれません。2011/06/26
-
- 電子書籍
- ワイルド ジャングル ラブ ヒート(単…