内容説明
さようならは決して言うまい―たとえ孤独の指を組んでも。暮れ方の季節を詠う女歌!注目の新歌集。
目次
風傷(肩から胸へ;海溝;失速 ほか)
運河(彩秋;砂時計;夕駅 ほか)
秋虹(点滅;地震;浄国 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
81
全学共闘に参加した歌人の第5歌集。5冊ぐらいの優れた短篇集を読んだ満足感を味わえる。女性の情感を前面に出した歌が印象的。そういった歌はドキッとする艶めかしさがあるがそれを誇示するものではなくて、孤独感や男女間の理解の難しさと言った感情に基づいており、すうっと心に入ってくる。「近すぎる人間誰もがうとましく溜息吐息ほろほろ零る」と言ったほろ苦い生の歌も絶品。オウムや阪神大震災を取り上げて時代と切り結んだ歌にも、表現者としての気概を感じた。2014/02/01
kaizen@名古屋de朝活読書会
28
#道浦母都子 #短歌 遠き電話に酔いて掠(かす)るるひとの声運河を遡る海霧を言う p9 いち早き春の光に会いに来ぬ黒南風(はえ)渡る波切(なきり)の海に p12 はたはたとスカーフ靡くこの果たて砲声止みしあの海がある 今日霞む遠州灘は神島の墨色濃ゆき輪郭を置く p13 潮溜り時間溜まりの砂の上ひとも私も言葉も凝(こご)る p14 運輸省海上保安庁第四管区大王埼航路標識事務所なりけり p15 両手にて君の冷えたる頤(おとがい)を包みていしは冬の夕駅 2017/07/05
双海(ふたみ)
10
暮れ方の季節を詠う。「寂しくてはた切なくて求めたる木綿(めん)のショールを肩から胸へ」「両手にて君の冷えたる頤(おとがい)を包みていしは冬の夕駅」「紫の菖蒲の柄の浴衣掛け旅の一夜をわたくしも……花」2023/07/15