内容説明
日本人の「自己」とはいかなるものか。古典世界から近代文学まで様々な表現の中に自己表出の変幻を見る、日本文学への原初的な設問。
目次
日本の「私」―表現様式を軸として
「身」の実(核)―神の化身
夢幻能一面―『忠度』を中心として
湖のほとり―芭蕉、「私」の光と影
鶴屋南北における変身
混血と分裂―日本近代文学における“私”
「描写」と「語り手」―田山花袋の描写論とその実際
自分を創る―近代日本の女性日記に現れる「私」・樋口一葉と中島湘煙を中心に
「私」の肥大と解体―啄木詩の変貌をめぐって
伝統を夢みる「私」―近松秋江『黒髪』の分析
鏡花文学における自己像幻視
都市大衆社会と「私」―「分身」と「自己像幻視」の位相
『名人』にみる三重の「私」と川端康成の「実」―古典的、道―禅的、「反射描法」的な読解の試み
古典と現代文学の「私」―その多声的構造