内容説明
言葉に「躓く」という全意識を賭けた身読の果てに開示した、漱石の秘めたもう一つの世界。本格的な近代小説の最初の作品といわれながら、謎を残したまま中断された漱石最後の作品『明暗』を解体し、漱石が巧妙に構築した「象徴的意味」をその細部に読み込みながら明らかにする画期的論考。
目次
はじめに―言葉に躓くこと
序論 『明暗』について
第1部 喪失
第2部 解体
第3部 帰属
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猫丸
11
「感想0」はよくあることだが「登録0」は珍しい。読書メーター初登場の本ということになりますね。1989年初版。漱石の吸引力は危険なほどである。漱石研究を名乗る本の中には「一線を越えた」かに見えるものが混じっている。テクストの磁場の強さを解析するうちに、ほとんどオカルト的読解の域に踏み込む著者も出てくるわけだ。本書はそこまでは行かないけれど「漱石のテクストには象徴表現が緊密に織り込まれている」ことを前提に『明暗』の解読に挑む。題名の「躓き」とは、ノーマルと思えない表現に出会うときに感じる違和感のこと。2023/10/19