内容説明
敗戦とともに滅び行く侯爵家の悲劇。日本人の忠誠心の謎を問う三島戯曲の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
155
舞台での動きは極めて少ないが、そこに濃密なまでの心理劇が展開する。ここでのドラマトゥルギーのあり方は、その意味では『サド侯爵夫人』に似ている。当主の朱雀経隆は何も語らない。その一子の経広は韜晦においてしか語れない。そして、この家の下女おれいもまた語らなかったのだが、やがて彼女は怜悧なまでの分析で彼らの葛藤を明らかにしていく。また、ヒロインの瑠津子は弁才天の化身であり、鎮魂の巫女にほかならない。「何もするな。何もせずにをれ」との言葉を経隆は全的に体現するのであり、究極そこに待っていたのは滅びの姿であった。2015/01/10
双海(ふたみ)
31
「ああ、お上、尊いお上、けだかい、あらたかな、神さびてましますお上、今やお上も異人の泥靴に瀆されようとしておいでになる。民のため、甘んじてその忍びがたい恥を忍ぼうとしておいでになる」・・・そのころ朱雀家もまた滅びの姿を纏い、消えてゆかんとする。そしてこの国の大義も・・・。久々に三島の戯曲を読みましたが、いいものですね。2016/01/17
warimachi
2
これは素晴らしいな。2021/08/20