内容説明
〈革命〉の実践へ向けて、思想と情念を極限まで突きつめた“狼”たちの〈罪〉に対する内省を感受しつつ、かれらの軌跡を克明に描く長篇ノンフィクション!
目次
第1章 死の機会を逸して
第2章 釧路・大阪・東京
第3章 狼の誕生
第4章 都内非常事態宣言
第5章 虹作戦
第6章 死刑宣告
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハイザワ
6
とてもいい本ではあるが、大道寺たちの「反日」を徹底するがゆえに自己否定も辞さない苛烈な態度を彼らのレベルで理解するのは難しいように感じる。大道寺の母は息子の持っていた正義感を理解こそすれ、その「反日」にこだわる姿勢は最後まで分からなかったのではないか。極限においては「日本」という自らの存在基盤を滅ぼすしかない、何のロマン的陶酔も存在しない闘争……。ほとんどの人間が日本人であることの原罪を認識しない、あるいは受け入れない(無論自分も)中で、その問題をまともに引き受けた大道寺らを考えることの意味は重いと思う。2018/10/08
K.Nagano
6
Amazonで文庫を見つけての再読だが、はじめてこれを読んでからもう25年以上も経つ。あのときは何だがすっきりしないものを感じて終わった。彼らが訴えた被抑圧民族との共闘は理解できるが、その主張と爆弾闘争という行動との間にあまりにも飛躍があり過ぎないかと思った。いま改めて読み返してみると、やはり彼らの行動に違和感はあるが、祖国に背を向けてまでの被抑圧民族への思いは切実に感じられる。いま、日本はまたあの暗黒時代に戻りつつある。白昼堂々繰り広げられるヘイトスピーチを見て、狼たちは何を思うだろうか。2015/07/09
tkgdgbd
5
思うところがあり、30年振りに再読。ここ数年、主にネット上で大安売りされている「反日」という言葉。45年前”狼“たちは、日本の内部から、日本の企業に搾取されているアジアの民に連帯し、日本にテロを仕掛けた。想像を絶した生真面目さ・ストイックさと覚悟、そして絶望的な愚かさで。まさに、日本に反抗するためその人生を消耗した。大勢の人命を巻き込んで。今、「反日」という言葉に引っ掛かるひとは、左右問わず是非本書を読んでほしい。そして、松下竜一の他の著作も。2019/03/23
ネギ
5
「反日」という言葉は今日完全に単純な罵倒語と化してしまった観があるけれど、60年代・70年代の思想史からもう一度とらえ直してみる必要があるように思う。松下竜一の筆力は圧倒的。対象への内在と、問いかけとの間のバランス配慮に倫理を感じる。「文学」として昇華している作品。2016/09/11
uburoi
3
1986年に「文藝」に掲載されているのだから大道寺将司が「最高裁において1987年3月24日に死刑が確定」する前に発表されたものだ。まだ執行されていないし、もしかしたら宮城刑務所にいるのかもしれない。東アジア反日武装戦線は、何故か仙台に縁が多くて在住しながらカンパ、爆弾の材料提供していた荒井まり子も捕まっている。黒川も仙台出身というんだけど本当だろうか。捕まってからも獄中闘争を続けるという凄まじさ。超法規的措置で妻のあや子さんと佐々木規夫の二人なんかは国外逃亡していまだ活動中だって。2012/10/28