感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
itokake
12
読友さんが全集を買っていたのをきっかけに、私もまず1冊、おすすめの本を読んでみた。濃厚な文学に触れた。著者は1931年生まれで、多感な子供時代を戦争に塗りつぶされた世代。時代に翻弄され、子供のままでいることを許されなかった。小説の主人公は祈祷師の予言に従って生後3月で捨てられ、その自分ではどうしようもない呪いを背負い、内省し己の内側へ沈み込む。その様は全く子供らしくなく、老成した人物のようだ。戦時中の生活描写と少年の内面世界、この対比があり、それぞれが引き立つ。終章の第6章は大阪大空襲か。圧倒された。2022/01/17