出版社内容情報
《内容》 医の原点とは何か,それは治療を求めて受診する患者と医療を実践する医療関係者両者が共有するものである。生きとし生けるものは生と死の間にあり,病は,死の淵を垣間見せる。生きることの楽しみや喜び,永遠の眠りという死への不安や悲しみの間に人は生きている。誰もこのことを声高に言うことはなく,心の中にあり,外からは見えることは少ない。
“医の原点”は,科学や医学の技術面は大きな進歩をした現代であるが,ヒポクラテスから2500年も経た現在,ますます深く浸透したというより,ますます浅く,昏迷するばかりの様相である。本書は東京大学医学部の学生と職員に対して行われた特別講義シリーズ“医の原点”を集めたものである。著名な著者の一人一人が,力をこめて行った講義に大幅に手を加えたのが本書である。 (序より)
《目次》
1)科学と芸術の対称性について
有馬 朗人(参議院議員・元東京大学総長)
自然の対称性/建築や絵画と対称性/ヨーロッパ文明と対称性/中国と日本文化と対称性/対称性の種類/ミクロの世界の対称性/対称性と物理法則/左右対称性とその破れ
2)私は如何にして免疫学者になり得たか
石坂 公成(元ジョンスホプキンス大学教授)
伝染病研究所での細菌学実習/免疫学の歴史的背景/日本で受けた教育/アメリカで受けた教育/学問に対する態度
3)東京大学医学部卒の文人―鴎外、茂吉、杢太郎、秋桜子―
加賀 乙彦(小説家)
森 鴎外/斉藤茂吉/木下杢太郎/水原秋桜子/医学の文章と文学の文章
4)仏教と医術
高崎 直道(東京大学名誉教授、鶴見大学学長)
ブッダは医師/仏教とインド医学/仏教における「こころ」「からだ」「いのち」/こころの医者としての仏教―現代の課題―/生死はほとけのおんいのち―道元の立場―