内容説明
大正12年に完成した小樽運河は、戦後の港湾整備と自動車交通によって衰退し、昭和40年代になると小樽運河を埋め立て、道路として整備する方針が小樽市により打ち出された。これに対し運河の保存運動が全国規模で高まった。市側は当初の全面埋立て計画を見直し、運河の半分の幅を残す構想案(現在のもの)を提示した。全面保存を求める保存派と意見が折り合わないまま、昭和58年に埋立て工事が着手され、昭和61年には小樽臨港線が開通した。運河沿いには「小樽運河ふれあいの散歩道」が整備され、現在の観光名所となっている。
目次
二〇余年の封印
「たとえ半歩でも前進」
歴史ある街・小樽
モータリゼーション到来
小樽運河戦争の火種
守り活かす
臨港線は運河ルートに
市長の基本姿勢
観光都市の景観
「飯田構想」
マスコミを味方につけた保存派
“極悪人”の真髄
運河埋立て可決
杭は打たれた
市長リコール請求
指揮官は独断専行
小樽の活性化のために
後世に伝える「不易流行」
著者等紹介
田村喜子[タムラヨシコ]
日本文芸家協会・日本ペンクラブ会員。京都府立大学文学部卒。都新聞社報道部記者を経て作家活動に入る。主な著書に『京都インクライン物語』(新潮社、土木学会著作賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mistral
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小樽は自分の出身の街です。運河が半分になりきれいになっていく様子を身近で見ていました。高校のころお金もないので毎日にようにうろうろとしていた薄汚いけれど時代を感じる事のできる街が無くなったのがとても淋しい。2014/12/31
白雪はくと
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道央の観光地として名高い小樽運河。その再開発にまつわる賛成派・反対派の衝突や訴訟問題を、再開発のデザイン案の作者や賛成派であった当時の市長の視点から著した一冊。賛成派の視点の強さが感じられはするものの、小樽運河埋め立て問題の概略を頭に入れる分には有用な一冊と思います。2013/01/23