内容説明
青山士は、パナマ運河建設に携わった唯一の日本人であり、荒川放水路の建設、信濃川大河津分水路の改修工事を指揮した土木技術者である。学生時代に内村鑑三の講演を聞き影響を受けて門下生となった。大学を卒業した青山は単身渡米し、熱帯雨林のパナマ運河開削工事に携わり目覚ましい成果を上げた。パナマ運河が技師青山を成熟させた。帰国後、内務技師として戦前の上記二大国家プロジェクトを完遂させた。不戦思想もあって内務技監を辞職せざるを得なくなるが、晩年は郷里磐田市で清貧の生活を送った。青山士は何よりも清廉を尊び「広く後世の人類のためになる仕事をしなければならない」との精神を貫いた。青山が日本工学会で初めて打ち出した「土木技術者の信条および実践要綱」は、不滅の倫理綱領である。
目次
第1章 通過儀礼1―生誕から中学卒業まで
第2章 通過儀礼2―高校入学、キリスト教入信、大学卒業
第3章 闇の奥・パナマでの七年半
第4章 荒川放水路開削と鬼怒川改修
第5章 新潟土木出張所長を経て内務技監に
第6章 戦時中、疎開
第7章 晩年、逝去
著者等紹介
高崎哲郎[タカサキテツロウ]
1948年栃木県生まれ。NHK記者、帝京大学教授、東工大などの非常勤講師を歴任。独立行政法人土木研究所と財団法人河川環境管理財団の客員研究員を経て、独立行政法人水資源機構の客員教授。作家、土木史研究家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かず
5
氏は東京帝大工科大学を卒業した土木技師であり、卒業後、パナマ運河の開削工事に日本人只一人の技師として携わります。その仕事ぶりは実に謹厳実直なものだったそうで、それは内村鑑三の教えによるキリスト教が大いに影響したようです。土木技師としての仕事の確かさに加え、人間的な厚みをもって、帰国後、内務省に奉職した折には荒川放水路や信濃川大河津分水路の改修に携わり、その後、人格を買われ、当時、学士では異例の内務省技監に着任します。退職後は困窮したようですが、私はそれすらも楽しんだのではないかと思います。2016/08/21
和菓子男子
0
現代だからこそ見習いたい、人と自然を愛した技術者の物語。2013/05/18