内容説明
フランスの景観についての研究を行ってきた体験を活かして、パリの景観を十八選び、空間の意味を読み解く。
目次
エッフェル塔―軸線の美学が生んだ造形
サクレクール寺院という異端―エッフェル塔のライバルは嫌われ者
シャトレとサン・ルイ島―パリにもあった直交する空間
ヴォージュ広場―パリにおける景観の誕生
ポン・ヌフとドーフィンヌ広場―アンリ四世によるシテ島の美化計画
ヴィクトワール広場とヴァンドーム広場―フランス式広場の完成
コンコルド広場という空き地―パリの中心は空洞だった
ブールヴァールという並木道―都市壁がパリに遺したもの
取り壊しによりできた街―太陽、緑、空間を求めて
ラヴォアジェがパリに遺したもの―入市税を徴収するための都市壁
要塞化した建物―コンシェルジュリーとサン・ジェルマン・デ・プレ教会
ドーム礼賛―広場から見るか、軸線上から見るか
パンテオンろマドレーヌ教会―革命に翻弄された二つのモニュメント
マルローが救ったマレ地区―パリと歴史的環境の保存
美観整備―ルソーの失望から世界の首都へ
大統領の美観整備―王と皇帝の夢は今も続く
コンクリートのない街―パリにはない建築材料
石の芸術vs鉄の技術―鉄はいかにして建築として認められたか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
315
著者の和田幸信氏は、足利工業大学教授。都市景観を専門とする。かつてパリ第8大学フランス都市計画研究所で研究し、本書で不動産協会賞を受賞している。さて、本書の表紙および巻頭を飾るのはエッフェル塔である。今でこそパリのシンボルになりおおせているが、できた当初(1889年)は文化人たちの評判は惨憺たるものであった。このエッフェル塔とパリの街の反対側に位置するのがモンマルトルの丘に聳えるサクレ・クール寺院。こちらの完成は1914年なのだが、どうやら未だに評判のほどは最悪とは言わないまでも今一つのままである。2022/12/05
ろべると
10
都市計画、特に美観の観点からパリの建築物や街並みについて解説している。オスマンの大改造に先立つアンリ4世によるパリの改造。それによってできたヴォージュ広場を囲むファザードの統一。こうした閉ざされた広場から、開放的なコンコルド広場への変容。城郭都市パリを取り囲む壁が道路になったのは、東京の外堀通りとも通じるところがあるかな。そしてポンピドー・センターに代表される歴代大統領主導の新たな建築は、ルイ14世の頃からのフランスの王権の伝統が今も継続していることを感じさせる。様々な気づきを与えてくれる、良い本だった。2023/03/18