感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
9
歴史が過去の批判によって進むのなら、A・ペレ(1874-1954)はそのような歴史に収まらないと著者はいう。古典主義を奉ずるボザール出身でありながら、モダニズム建築の建築材(鉄鋼材とコンクリート)を用い、モダニズム建築から装飾として排除される古典主義的な細部を尊重しながら近代的な集合住宅も手がけるその折衷主義には歴史的革新と呼べるものはない。が、ペレの作品と呼ばれる鉄筋コンクリート建築の教会やアール・デコ博のパヴィリオンを文献に沿って過不足なく紹介する本書を読むと、過渡期の建築に潜む多数の可能性が見える。2025/09/14
Koki Miyachi
5
学生時代以来の再読。改めてペレをレビューしたくなった。石工の家系に生まれ、エコール・デ・ボザールで学び、家業の施工業を継ぎ建築家としてデビューする。鉄筋コンクリートという構造、材料を用いて、ボザール的なクラシシズムの美学の実現を目指した。近代建築への時代の流れの中で、立ち位置は微妙なところもあるが、自らの美学を守り「ペレ調」とも言うべきスタイルに磨きをかけた。ペレにとって建築はむき出しの理念ではない。細部の納まりや洗練に情熱を燃やした。今の時代にはない建築観が新鮮。傑作ル・ランシィの教会は是非見てみたい。2013/02/26