内容説明
少女は男となることを望んだ…!男装して宮中にあがり、帝の愛をめぐって姉と争う少女の物語絵巻。男性だけが成仏できるとされた時代、女性はどのように生きたのか―。人物絵の隣に台詞が書かれた「室町時代のマンガ」とも言える、ユニークな佳品。マンガ的吹き出しつき現代語訳に加え、絵巻全体を写真で紹介。本作品が持つ意義も多方面から、あますところなく伝えます。
目次
1 現代語訳(上巻;下巻)
2 本文・注釈
3 解説(『新蔵人』絵巻の特徴;伝本について;絵巻の筆者)
4 読みのポイント(『新蔵人』絵巻冒頭部の仕掛け―文化継承装置としての引歌;『新蔵人』絵巻の結末は「めでたし」か;異性装の物語としての『新蔵人』絵巻;『新蔵人』絵巻と絵を描く女房;美術史からみた『新蔵人』絵巻―メリッサ・マコーミック氏インタビュー)
著者等紹介
阿部泰郎[アベヤスロウ]
名古屋大学大学院文学研究科付属人類文化遺産テクスト学研究センター教授
江口啓子[エグチケイコ]
名古屋大学大学院博士課程後期在籍、名古屋市立中央高等学校教諭
鹿谷祐子[シカタニユウコ]
名古屋大学大学院博士課程後期在籍、愛知教育大学非常勤講師
玉田沙織[タマダサオリ]
名古屋学院大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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T66
9
面白かった!話題の展示会「装いの力―異性装の日本史」に取り上げられている作品ってことで初めて知り、図書館で借りてみた。もともとの絵巻、これはもはや漫画。絵にセリフが書いてある。ご丁寧にセリフの順番も「一」「ニ」と振ってある。驚いた。ストーリーも「とりかへばや物語」な面白さ。兄の代わりに男装して仕事→帝にバレる→寵愛される→懐妊→極秘出産、なんと男児→帝の内侍である姉の子ってことにする→本人は出家 とはドラマすぎる、、、昔の人ってよく考えるなあ。とはいえ事実は小説より奇なり、とも言うか。図書館本2022/10/23
akuragitatata
4
異様な本。「この本が最初に出会う面白い古典文学になるかもしれません」と書いてある。でも「面白い古典文学」に出会ってない子がこれを読むのはハードル高すぎて崖から落ちて死ぬだろうと思う。面白く読ませたい一心の工夫と、面白く読みたい編者の欲望の噴出が地滑りを起こす海洋プレートのように絶叫のきしみをあげていて、それに気づいた沿岸の海洋発電所は緊急停止の指示を受ける。とまりません! ダメです、という作業員の悲鳴は誰も聞いておらず、停止しなかった発電所はそのまま電力を作った。電柱は世界に一本もなかった。一本も。2017/06/09
呑司 ゛クリケット“苅岡
2
室町時代を背景にした男装姫のラブコメディ。帝や兄蔵人も出てくるが、どの男もポンコツなので「私が、男やるしかない…」と活躍する話。と書くと多くの少女漫画と何が違うのか?と思うが、驚くなかれ、この「新蔵人」は「とりかへばや」や「有明の別れ」と同じ古典なのだ。室町時代と言わず男がポンコツなのは変わらない。冒頭に物語はどう言う読み方をするために存在するか、解釈しながら読むことが大切と言う言葉が心に残った。2021/08/31
まーたろ
2
作中人物の台詞を吹き出しの中に現代語訳して書いてあるのが、マンガっぽくて読みやすい。面白かった。ただ、共感できる登場人物はいなかった。特に男。帝も兄ちゃんも無責任男。詞書きと絵のニュアンスが違うっていうのは勉強になった。2019/05/27
保山ひャン
1
室町時代の絵巻「新蔵人」の現代語訳と、研究。「新蔵人」は、親の自由な教育方針のもと、男として生きたいと思った娘が男装で帝に仕え、嫉妬や情愛の末、出家する物語だが、変成男子やジェンダーなどのキーワードのもと、考察が加えられている。「あこはただ、男になりてぞ走り歩きたき」(私は男になって走り歩きたい!)の思いではじまり、出家して「尼と入道とは似てこそあらめ」(尼も入道も一緒やんけ!)と憤慨し、「変成女子」の言葉を出して終わる。巻末のメリッサ・マコーミック氏のインタビューがわかりやすくて面白い。 2015/04/28