内容説明
10世紀後半から14世紀中葉にかけて、女性作者たちは、自己を素材にして多彩な作品を残した。彼女たちは、限られた時空で何を信じ、何に価値を見出し、置かれた状況と自己をどのように捉え、どのように生きたのか。仮名日記文学はその自己表象の一つである。個々の作品だけではなく、中古と中世を区切るのではなく、平安期から南北朝にかけて続いたひとつのジャンルとして捉え、仮名日記文学に向き合う。
目次
序章 仮名日記文学の流れ
第1章 自我と時間(“自我”の表象―仮名日記文学と自伝;“時間”の表象―解体と組み換え ほか)
第2章 夢の表象(旅寝の夢(勅撰集覊旅歌の類型;紀行にみる類型と独自性)
『更級日記』の夢―作品空間と存在把握 ほか)
第3章 涙の表象(『蜻蛉日記』の涙―精神の変容と軌跡;『讃岐典侍日記』の涙―号泣から詩的表現へ ほか)
第4章 制度と表現(『弁内侍日記』にみる危機感と表現;『とはずがたり』の達成―家と女をめぐって ほか)
終章 自己を語ることの意味
著者等紹介
今関敏子[イマゼキトシコ]
日本文学研究者。川村学園女子大学教授。帝塚山学院大学等を経て現職。1990年度サンパウロ大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きいち
25
何らかの喪失体験を機に、人生のある時期・側面が選択され、回想と意味づけがなされたリフレクションの文学。それが平安鎌倉の「仮名日記」だという。土佐日記も蜻蛉日記も和泉式部日記も、タイトルが~日記だからといって、○月〇日に何をどうした、というものではない。なるほど、だから「とはずがたり」も日記文学と言われていたのか、ようやく腑に落ちた。400年間14作品全編に触れて論じた400頁。作品の内側からの理解。◇<滅びを回避し、環境を受け止めオリジナルの生を生きた単身者>そんな著者の二条観が好もしい。追いかけよう。2020/04/12