内容説明
アイヌの人々が残した壮大な神謡「ユーカラ」から、フクロウ神とウサギの話しを紹介。
目次
第1話 銀の雫をあたりに散らし―シマフクロウの神がみずからうたった謡(シマフクロウの神の私が人間世界を見る;私を見つけた子供たちが競って矢を射る;一人の貧しい子が私を狙う ほか)
第2話 サンパヤテレケ(横っ跳び)―ウサギがみずからうたった謡(ウサギである僕は兄と山へ行った;僕は怪我をした兄さんを助けるため村へ引き返す;僕はなんと兄さんの用事を忘れてしまった ほか)
第3話 コンクワ(フクロウの鳴き声)―シマフクロウの神がみずからうたった謡(老シマフクロウの私は使者を捜す;カラスの若者は失格する;山カケスも失格する ほか)
著者等紹介
篠原昌彦[シノハラマサヒコ]
1952年生。駒沢大学大学院修士課程人文科学研究科修了。現在、苫小牧駒沢大学国際文化学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
352
ユーカラの中から3つの神謡をとりあげる。シマフクロウの神が語る神謡2篇とウサギの神謡1篇である。こうした神謡において、神が自ら1人称語りをするものだということを初めて知った。例えば第1篇はこんな風に語り始められる。 Sirokani pe ranran piskan ,konkani pe ranran piskan(銀の雫をあたりに散らし金の雫をまわりに落とし)。そして、このリズミカルなフレーズは篇中で何度か繰り返されるのである。ユーカラは元来が口頭伝承の歌であったのであるから⇒ 2022/12/04
ハルト
11
読了:◎ アイヌ民族の壮大な叙事詩。先祖から伝わる動物や神の神謡が、アイヌ語とともに日本語訳が付されて歌いあげられている。シマフクロウの神、ウサギ等の目線から語られるユーカラ。そこには、アイヌの自然観や神話体系、日常での祭事、狩猟や漁業などの生活のさまが描かれており、瑞々しく雄大な自然への感謝の念がある。世界を見つめるまなざしがおおらかで、昔ばなしとしてもおもしろく、もっと読みたくなった。巻末にある本多勝一のルポルタージュの『アイヌ民族』(抜粋)もアイヌの祭を細やかに書いてあった。2020/12/08
木倉兵馬
3
古代ギリシャや北欧のような大英雄や神々の戦いといった神話ではなく、あくまで人の近くに存在し、動物たちそれぞれが語る力を持っている「カムイ」である、というような印象を受けました。詩はアイヌ語の音読したものを探して一緒に聞きながらのほうが楽しめそうです。2022/10/18
kaizen@名古屋de朝活読書会
3
銀の雫をあたりに散らし シマフクロウの神がみずからうたった謡 シロカニ ペ ランラン ピシカン カムイチプカ カムイ ヤイユカラ 横っ飛び。ウサギがみずからうたったうた サンパヤ テレケ イセポ ヤイユカラ フクロウの鳴き声。フクロウの神がみずからうたった謡 コンクワ カムイチプカ カムイ ヤイユカラ。本多勝一 アイヌ民族 の イヨマンテの日 を抄録。ユカラの本は、資料性があり、初めて読むには敷居が高いものがある。「日本歌人選」では、他の作品群と同様に、 こぢんまりと纏まっているので読みやすい。2013/02/09
笛吹岬
2
3編のユーカラを紹介。とても取っつきやすく、解釈鑑賞にはところどころ思い込みのような記述があるが、初めてユーカラを読む人には馴染み易いだろう。ただ、編著者が「金成マツ女史」とか「知里幸惠嬢」と表記するのは、好感を持てない。2013/04/19