内容説明
その短い生涯において新たな俳句と短歌の確立を目指し命を燃やした改革者。
目次
短歌(御仏にそなへし柿の;菅の根の永き春日を;久方のアメリカ人の;足なへの病いゆてふ;吉原の太鼓聞えて ほか)
俳句(あたゝたかな雨がふるなり枯葎;若鮎の二手になりて上りけり;薪をわるいもうと一人冬篭;赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり;金州の城門高き柳かな ほか)
著者等紹介
矢羽勝幸[ヤバカツユキ]
1945年長野県東御市生。國學院大學文學部卒業。二松学舎大学教授。のち(現在)同大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
85
正岡子規の代表的な短歌と俳句に詳細な解説を付けた本。子規の短歌をまとめて読むのはこれが初めてだった。文法が詳しく解説してあり、国語の文法が非常に苦手な私には有難かった。子規の短歌は単純明快なものが多いが、清新な詩情が漂っていて明治という新しい時代と繋がっているような気がした。一見万葉調に感じる素朴な歌の中心に「わたし」の存在が感じられ、子規が自己意識を持った近代人として歌を詠んでいたことが理解できた。2014/07/20
kaizen@名古屋de朝活読書会
50
#正岡子規 #短歌 御仏にそなへし柿ののこれるをあれにぞたびし十まり五つ #返歌 我が庭の百柿取れた柿の木もベランダ作るために切ったり 同じ状況の俳句も紹介している。 御仏に供へあまりの柿十五 習って #返句 我が庭の柿の木切ってベランダに2016/01/15
クラムボン
14
短歌30首の他に俳句が20句入っている。子規は若い時から歌を詠んでいたが、主な仕事は俳句の改革だった。そんな彼が本格的に短歌に挑んだのが30歳を過ぎてから…35年の生涯なので晩年だ。当時の主流である古今調を排し、万葉集の復活、そして俳句で物にした写生《見た景をそのまま詠むこと》を基本に実作した。ただ俳句に比べると今一つか…⁉ それが死の前年「しいて筆を取りて」連作10首では、死を強烈に意識したのか、溢れ出る感情を抑えきれなくなったようで、写実の中に見事にそれが昇華したようで、素晴らしい歌が生まれたと思う。2025/04/13
ハルト
10
読了:◎ 正岡子規の短歌三十首、俳句二十句を収めた一冊。通して見ると、短歌俳句ともに写実性があり、どちらもシンプルな中にその背景を詠ませるものだったように思う。また短歌は万葉集からの影響が見られてもおり、その抒情的部分が写実性とはまた違った歌の豊かさを詠んでいるように思った。巻末に付せられた夏目漱石の子規評がユーモラスで仲のよさが伝わってくるようでよかった。2020/08/06
かつみす
6
「くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる」「瓶にさす藤の花ぶさみじかければたゝみの上にとゞかざりけり」正岡子規の短歌の創作は、俳句と比べると少ないけれど、この本では短歌30作・俳句20作と、短歌にウェイトを置いて紹介。そのせいか、短歌の方が自分に馴染む作品が多いように思った。病床からじっと眺める花や草木。そして、思うように体を動かせない自分への眼差し。病を得て死に近づきながら、他の誰にもたどり着けない独自の境地に至った子規。現代語による平易な意訳、そして的確で分かりやすい解説がありがたい。2018/02/05