内容説明
源氏・和歌・連歌など古典学全般の知識に通じ、古典を庶民層に広く普及させるとともに、貞門俳諧の祖として俳諧の興隆に大きな足跡を残した松永貞徳。ほぼ同時代、堂上貴族の中にあって放逸の人生を謳歌し、貞徳とも付き合いを持って和歌にも一家言を有した異色歌人光広。二人の歌を並べて取り上げ、地下(堂下)と堂上という流れを通して、多様な近世初期和歌の萌芽を見る。
目次
松永貞徳(すき間なき槇の板屋に;くれ竹の夜の嵐は;けふこずは明日はと思ふ;暗き夜の枕の海も;行きかよふ月雪の夜の ほか)
烏丸光広(誰もさぞうれしかるらむ;関の名の霞もつらし;開けて見ぬ甲斐もありけり;夕露もむすぶばかりに;あまざかる鄙もへだてじ ほか)
著者等紹介
高梨素子[タカナシモトコ]
戸籍姓、清水。1944年東京都生。早稲田大学大学院修了。学位、博士(学術)(埼玉大学、2008年9月)。現在、いわき明星大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
164
光広の歌を上達の跡が見えるように並べている。幽斎の添削を経た《関の名の霞もつらしかへりみるきのふの空もけふはへだてて》は「たけあり」と評される。私は霞ヶ関ビルを連想した。彼の歌は現代の短歌のような所があって受け止め易い。貫之の《袖ひちてむすびし水のこほれるを春たつけふの風やとくらむ》、後鳥羽院の《石清水すみける月の光にぞむかしの袖をみるここちする》を承け、《河風の音も流れてゆく水の底までこほる秋の夜の月》と詠んだ。私は三首の中で光広の歌が一番しっくりする。少なくとも風、水、月が眼前にあるように感じられる。2024/09/03
夜間飛行
161
貞徳の夜の歌はどれも良かった。《くれ竹の夜の嵐はしづまりて末葉にあまる雪ぞ音する》…くれ竹の嵐から一転した静寂をドサッと落ちる雪の音で印象づけている。解説によれば、深夜ニ雪ヲ聞クの歌題を、古歌は「まがきの竹の雪の下折れ」のように描写してしまうのに対して、この歌は音によって想像させている。《暗き夜の枕の海も明けゆけば人をみるめの生ひぬものかは》…これは眼病を患った晩年の歌。《露の命きゆる衣の玉くしげふたたびうけぬ御法なるらむ》…83才での辞世の歌。御法は実りの掛詞だろうか。年取っていく先の道しるべにしたい。2024/09/01
m
5
柳広司「風神雷神」を読んで気になった烏丸光広。彼が登場する小説を他にも読みたかったが、近くの図書館にあったのは歌集のみ(笑)彼がどんな歌を読んだのか分かったので良しとしよう。2017年260冊目。2017/11/30
kinaba
0
本歌取りの流れの伝統に忠実に歌われた歌達だなあ2019/07/18
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