内容説明
恋愛感情を主とし集団に向けて詠われた東歌、九州沿岸の警備に赴く兵士とその家族が詠んだ防人歌。『万葉集』に残る、東国に生きた人々の声を聞く。
目次
東歌(なつそびく海上潟の;葛飾の真間の浦まを;筑波嶺の新桑繭の;筑波嶺に雪かも降らる ほか)
防人歌(わが妻はいたく恋ひらし;大君のみことかしこみ;八十国は難波に集ひ;真木柱ほめて造れる ほか)
著者等紹介
近藤信義[コンドウノブヨシ]
1938年東京都生。國學院大學大学院文学研究科博士課程修了、博士(文学)。現在、立正大学名誉教授。國學院大學大学院客員教授。日本古代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
331
このところ八代集を中心に王朝期以降の和歌を読んでいたので、万葉集の言葉遣いが新鮮なものに感じられる。ことにそれが東歌、防人歌ゆえになおさらである。例えば東歌の中でもとりわけ名高い一首「信濃道は今の墾り道刈りばねに足踏ましなむ沓はけ我が背」 。王朝歌なら、なんらかの技巧が凝らされるだろうが、こういう表現には誰しも心うたれるだろう。防人歌「大君のみことかしこみ磯に触り海原わたる父母を置きて」。与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」を思わせる歌である。これから辺境に向かうだけに悲壮感もひとしおである。2022/09/16
新地学@児童書病発動中
99
東歌のリズミカルな言葉の響きが本当に良かった。音読してみると、心が洗われる気がした。後代の歌のように詩的な美には欠けているが、それでも素朴な美しさがある。このように澄んだ調を持った歌は、あまり読んだことがない。解説によるとこの時代の関東の人々は、本当に歌が好きだっだそうで、詩や短歌が好きな私の直接の先祖のような気がしてくる。メロディーをつけて、人々が集まる席で歌われたものも多かったのだろう。東歌とは対照的に、防人歌は緊張感が漂っているものが多い。自分の家族の無事を祈る歌は、(続きます)2017/11/05
kaizen@名古屋de朝活読書会
58
#和歌 #東歌 なつそびく海上潟の沖つ洲に船は留めむさ夜更けにけり #返歌 夏麻引く宇奈根の渡しからくだり二子玉川九品仏ゆく 2016/01/24
クラムボン
9
「東歌」は歌として伝承された民謡的な調べがあるようだ。特定の個人の歌というよりは歌い手が集団に向かう姿勢が感じられる。一方「防人歌」では、兵士は故郷や家族への想いを歌い、見送る家族は兵士の無事を祈る、極めて個人的な歌だ。東国の方言で謡われる素朴でベタな表現の歌もあれば「信濃路は今の墾り道刈りばねに足踏ましなむ沓はけ我が背」のような名歌もある。その中で「誰そこの屋の戸おそぶる新嘗に我が背をやりて斎ふこの戸を」新嘗の祭りに精進潔斎する私(妻)が籠る家の戸を揺らす誰かが居る…こんな際どさも東歌にはある。2024/01/05
はちめ
5
東歌は民謡的要素があり歌い継がれる中で洗練されていったということもあると思うが、防人歌で技巧的なものは家持の筆が入っているのではないかと疑ってしまう。まあ、歌人名も入っているのでその歌人の作だと信じるべき何だろうが。☆☆☆☆2019/10/28
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