内容説明
日本の著名な歌人を採り上げ、その代表作を厳選して紹介。一冊で取り上げる歌は40~50首(作品)。各歌には現代語訳をつける。振り仮名つきで読みやすい丁寧な解説つき。歌人略伝・略年譜を付し、生い立ち・歴史的背景がわかるようにした。それぞれの歌人についてより深く知るための読書案内付き。解説で、それぞれの歌人の特色と、文学史的位置づけを行う。巻末に作家・評論家・研究者による各エッセイを収録。
目次
春の鳥な鳴きそ鳴きそ
かなしげに春の小鳥も
仏蘭西のみやび少女が
はるすぎてうらわかぐさの
片恋のわれかな身かな
こころもち黄なる花粉の
君かへす朝の舗石
桐の花ことにかはゆき
歎けとていまはた目白
病める児はハモニカを吹き〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
343
白秋の歌を1首選ぶとすればこれか。「君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ」編者の國生雅子氏は断定を避けているが、「君」はやはり人妻だろう。だから朝に「かへ」さねばならないのである。時に白秋27歳。なんとも美しい後朝の歌。「さくさく」とのオノマトペが見事。「林檎の香」の象徴詩風の表現もまた白秋ならでは。雪の白とそれが朝のかすかな光の中で降りしきる様は白秋の心情を語って余りある。もう1首「春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外の面の草に日の入る夕」。『桐の花』巻頭歌。これまた白秋の特徴が横溢する。2022/12/24
新地学@児童書病発動中
115
北原白秋の代表的な短歌に詳細な解説を付けた本。「春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外の面の草に日の入る夕」のような華麗な作風から、晩年の「照る月の冷えさだかなるあかり戸に眼は凝らしつつ盲ひてゆくなり」の枯れた味わいを持つ作風への変化が興味深かった。「君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ」はいわゆる後朝を主題にした短歌だが、艶めかしいというより、青春の叙情が漂っており、全作品の中で一番好きになった。雪の踏み心地と林檎の歯ごたえを、組み合わせるところが恐ろしく巧い。2018/07/25
kaizen@名古屋de朝活読書会
56
#北原白秋 #短歌 春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外の面の草に日の入る夕「桐の花」 #返歌 秋の鳥鳴けし鳴けしなあおあおと志段味の原に鳧集う朝2016/01/10
かふ
17
北原白秋は姦通罪のあとに『桐の花』で人妻との恋をロマンチックに抒情的に歌上げる。それは心よりもモダニストとしてのコピーライティングな世界でライト・ヴァース的な俵万智らの現代短歌のさきがけだったのではないか?都会のカフェの青春の花を歌い上げ、そして『雀の卵』になると反省的に父母への改心が歌われる。それは鳥として磔から飛び立つ姿として郷愁として童心に帰ることでもあったのだ。思想がないと言われるのは白秋の戦略か?それは大衆の中に羽ばたくことだった。2025/09/02
ハルト
6
読了:◎ 北原白秋の代表的短歌を三十首まとめてある。詩や童謡でも著名な作者の短歌の裏に隠された想い。二十代で姦通罪を犯し牢屋へと入れられ、それについて詠った歌が、きらびやかでありながら柔らかく、また五十歳を過ぎ視力が衰えたりとしたことが身に降ってかかった歌が哀切さに富んでいたり。さまざまな人生の機微を写しとってありました。いつ詠んでも新しく懐かしい。そんな歌人だなと思いました。2020/02/11
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