内容説明
『源氏物語』の中で文脈の表層に表される出来事と深層にもつ別の意味とが絡み合う様相を明らかにし、『蜻蛉日記』では「私」を語ることがどのように「公」の世界へつながっているのかに着目。一人の女性がいかに新しい散文を作り上げていったのか、平安時代に女性が「書く」ことがもっていた意味を問い直す。
目次
第1編 心のかたち(朧月夜物語の深層;天翔ける死者たち―『源氏物語』の死の思想;「隔てなき」男女の贈答歌―宇治の大君と薫の歌;浮舟と手習―存在とことば)
第2編 理念としての皇統(光源氏の皇統形成―前坊の娘・秋好入内の意味;絵合巻の絵の授受をめぐって―冷泉帝直系化の仕組み;藤裏葉巻の夕霧―「光源氏的なるもの」の断絶という観点から;物語の変質を証す二つの儀式―『源氏物語』宿木巻の産養と藤花の宴)
第3編 禁忌という発想(『伊勢物語』六九段の禁忌侵犯―斎宮の持つ力;藤壷の想い―近世注釈の解釈;「端近」なる女君たち―女三の宮と浮舟をめぐって;『狭衣物語』の斎王たち―聖なる皇女のゆくえ)
第4編 「日記文学」という文学形態(日記文学の源流―手習歌と手習文と;「国文学史」の中の蜻蛉日記―近世から近代へ;女へのとらわれ―女流日記文学という制度;平安「女流」文学の文化―『蜻蛉日記』の評価をめぐって;日記と日記文学の間―『蜻蛉日記』の誕生をめぐって;なつかしい死者・恐ろしい死者―『蜻蛉日記』「みみらくの島」の伝承をめぐって)
著者等紹介
吉野瑞恵[ヨシノミズエ]
東京大学文学部国文学専修課程修了。同大学院修士課程修了。現在、駿河台大学現代文化学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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