内容説明
稀代のメディア・プロデューサーはどのように誕生したのか?メディア・大坂・文化をキーワードに、西鶴の文芸活動とその時代を描く。近世前期文化史としても重要な書。
目次
序章 近世初期文化とメディア(近世メディアの開放;流言と情報管理;出版メディアの成立)
第1章 俳諧師西鶴の出発(西鶴の生きた時代;職業俳諧師への道)
第2章 西鶴の俳諧と出版メディア(大坂書肆の俳書出版;出版メディアの利用)
第3章 浮世草子の成立(『好色一代男』の俳諧;「流行作家」西鶴の誕生)
第4章 浮世草子の展開(貞享年間の西鶴;西鶴の晩年と遺稿出版)
著者等紹介
中嶋隆[ナカジマタカシ]
1952年、長野県生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了。大谷女子大学専任講師、横浜国立大学助教授を経て、早稲田大学教授。小説『廓の与右衛門控之帳』(小学館)で、第八回小学館文庫小説賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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diet8
2
面白いところ。(1)版本が出た後も、写本は滅びるどころか増えている、(2)写本から版本になって、絵を入れることが可能かつ頻繁になった、(3)先行研究で指摘済みだが、好色一代男の最後の女護島への旅は、西鶴の生涯で三度あった補陀落渡海と関連、(4)西鶴の死ぬ翌年に死んだ芭蕉が、西鶴を批判している点(人情を述べるとしても細々としたことを述べるので、西鶴の文章は品格が欠ける)、あとはだらだら西鶴の各作品の粗筋と感想であって、読んだ西鶴作品については、得るところはなかった。西鶴作品と出版の関連はwikiで読んでた2016/08/16
笠井康平
2
西鶴を「終戦後の高度経済成長期に活躍した出版界のマルチタレント」として読み解きます。西鶴論を漁ると、どうしても「好色」や「粋」についての解釈学ばかりが目につきます。その中で珍しい本です。『蔦屋重三郎』や『江戸の本屋』などとあわせて読むといいです。2013/07/05