内容説明
日本の歌が万葉集からのち失ったもののなかに万葉の万葉たる所以を見出す。歌についての明確な意識の確立は、必ずしも歌の創造性や豊富化をもたらしはしない。万葉集から古今集へ、定型化と洗練に向かう過程で、多くのものが失われた。万葉を万葉たらしめている要の石―初期万葉、人麻呂、憶良などの作品を中心に論じる。
目次
和歌史のなかの万葉集
1 初期万葉(中弭の音すなり―中皇命の歌;倭大后―天智挽歌の方法;岡本天皇の歌;わたつみの豊旗雲―中大兄の歌;吉野の鮎―わざうた・天文・遁甲の術;百伝ふ磐余の池に―大津皇子の歌)
2 柿本人麻呂(人麻呂挽歌の構造―泊瀬部皇女献歌;いさな取り海辺をさして―人麻呂相聞長歌私見;柿本人麻呂・阿騎の野の歌;人麻呂・阿騎の野の歌の周辺;人麻呂的母斑―巻七詠物歌抄)
3 山上憶良他(初期の山上憶良;山上憶良における「子等」の問題;熊野と志賀の白水郎;遣新羅使人と古歌;軽太子・軽大郎女の歌物語)
4 付論(金井清一著『万葉詩史の論』を読んで;上代文学概説)
著者等紹介
阪下圭八[サカシタケイハチ]
1927年東京に生まれる。1950年鎌倉アカデミア文学科卒業。1953年法政大学文学部日本文学科卒業。その後、日本文学協会、法政大学文学部助手を勤め、1962年法政大学大学院博士課程単位取得。1963年東京経済大学専任講師。同助教授をへて、1972年東京経済大学教授。1998年定年により退職。現在、東京経済大学名誉教授。2011年12月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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