内容説明
晩秋の秋空を細い白い糸の群れが飛ぶ。クモたちの神秘の営み「雪迎え」を世界で初めて解明した幻の名著の復刻。
目次
雪迎え(クモの空中移動)(神秘な現象「雪迎え」;「雪迎え」への追究;「雪迎え」の正体 ほか)
文学作品のなかのgossamer(文学作品における遊糸・かげろう;イギリス・アメリカの文学作品のなかのgossamer;ドイツ・フランスの文学作品のなかのgossamer ほか)
クモの世界と人間の世界と(自然な姿のクモ;妖怪・変化・魔性のクモ;瑞祥としてのクモ ほか)
著者等紹介
錦三郎[ニシキサブロウ]
大正3年、山形市前明石に生まれる。昭和11年、山形県師範学校専攻科卒業。昭和39年『蜘蛛百態』(自費出版)(第12回日本エッセイスト・クラブ賞受賞)。昭和47年山形新聞「ふるさとの自然」レギュラー執筆。昭和48年『空を飛ぶクモ』(学習研究社)。昭和50年、第17回厚生省児童福祉文化奨励賞、第22回サンケイ児童出版文化賞、第2回ジュニア・ノンフィクション文学賞受賞。第21回斎藤茂吉文化賞受賞。平成4年NHK東北ふるさと賞受賞。平成9年、没(83歳)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うどん華
1
晩秋の晴天の青空を白い糸がかすかな風に乗って流れてくる。糸が絡まり小さな固まりを付け流れてくるものもある。ある時は夕日に染まり淡いピンクに光りながら目の前を通り過ぎ、そらの中に吸い込まれて見えなくなる。蜘蛛たちが一斉に尻から糸を出し、上昇気流に乗って空を飛んでいく。この現象が現れると翌朝は山の頂がうっすらと雪化粧。それが山形県の米沢盆地で伝えられている「雪迎え」。なんと神秘的な現象だろう。思わず私の心を鷲掴みにした。2016/09/23
rinpei
0
クモの飛行、バルーニングはテレビ番組を見て知ってはいた。実際に見たのは5年ほど前、鹿児島のだだっ広い農地の一角が手のはいっていない草地になっていて、あちこちの枯れた草の先端から次々とか細い糸が伸び、風にあおられ揺らぎ、やがて飛び立って行った。傾いた冬の弱い日差しの中に照らされきらめくその糸は美しかったが、風任せの小さな蜘蛛の行く末はたよりなく、我が身と重ね合わせ哀れに思った。 2017/10/24
isao
0
文学的視座と科学的視座の交錯点にある。動物・虫の多くはトリックスターとして、文学に登場してきたが、生物学的な特徴が解明されるにつれ、徐々に登場の場が減ってきたように思う。 文学と科学が袂を分け、それぞれに細分化されて、まるで嫌悪しあうかのように存在している現在、同じ学というフィールドで語られる本書はとてもユニークな一冊。 科学が多くを解明したとしても、根本の謎は何も解き明かせない。文学は常にその謎と戯れて欲しい。2013/02/17