出版社内容情報
いざ、物語の輝ける時代へ!
平安から鎌倉さらに南北朝期まで500年に及んだ王朝物語の時代をダイナミックに捉えた、日本の物語文明史!源氏物語の背後にある失われた多くの物語をも視野に入れたとき、日本の王朝物語=『源氏物語』という単純な図式は成り立たなくなる。時空を越えて日本の王朝物語を語り尽くす!
まえがき
第一章 知られざる物語山塊の発見--新たなる物語の時代像
日本列島の文学史と物語山脈
小説が輝いていた時代
一〇〇〇年の時差で歩む物語と小説の時代
王朝物語山脈のゆくすえをどう捉えるか
寥々たる数の現存する物語
現存する中世王朝物語の作品群
現存する物語は秀逸な作品か
散逸した物語世界の発掘はどのように始まったか
散逸した物語からみた新たな物語史像
数量データから求められる物語史像の修正
物語の時代の本流となった作り物語
物語の本質は〈作る〉ところにあるとみた『無名草子』
物語の時代はどう眺望できるか
五〇〇年に及んだ物語の時代
第二章 最初の峰々と東アジア文化圏の波動--古伝承から初期物語へ
物語山脈の形成をどう捉えるか
「絵合」巻場面と「物語の出で来はじめのおや」
末摘花の読んでいた古物語の由緒
『はこやのとじ』の基本情報
『はこやのとじ』の物語復原
泉州本『伊勢物語』前半部の情報解読
泉州本『伊勢物語』後半部の情報解読
「つみ」・「はこや」は柘枝伝説を反映するか
『懐風藻』に詠まれた柘枝伝説の神仙譚的受容
『続日本後紀』にみえる天へと飛び去った天女
『万葉集』の柘枝仙媛と『柘枝伝』
『万葉集』の伝承歌と歌垣
『柘枝伝』と『はこやのとじ』の対応構造の示唆するもの
日本語の修辞文体をもった『はこやのとじ』
車持皇子が捏造した異郷訪問譚
平安文人たちが親しんだ志怪小説
劉晨と阮肇の異界訪問
東アジアの〈知〉の波動と初期の物語群
第三章 歌物語とその尾根の行方--『伊勢物語』二十三段の物語史
『たけくらべ』と『伊勢物語』
一葉における王朝文学の教養伝統
『伊勢物語』二十三段をどう読むか
純愛の結実
新たな女の出現と危機
愛情のもつ精神性の輝き
『伊勢物語』における二人妻譚の位相
『はいずみ』をどう読むか
『伊勢物語』の世界を響かせる『はいずみ』
『はいずみ』における語りの方法
『はいずみ』の眼目はどこにあったか
『はいずみ』の滑稽譚の『掃墨物語絵巻』上巻への継承へ
『掃墨物語絵巻』の魅力と閑寂な出家生活をえがく物語へ
『伊勢物語』二十三段の物語山脈の連なり
第四章 物語の山巓の形成--『源氏物語』の想像力と紫式部の知的坩堝
海外における『源氏物語』
末松謙澄の英訳『源氏物語』はどう受容されたか
『源氏物語』を二十世紀の文学にしたアーサー・ウエーリー
中国における『源氏物語』翻訳
紫式部絶賛が生んだ伝説
不幸がちからとなって誕生した作家紫式部
母の早世が可能にした父との生活
父親の不遇をともに送った時間
学才に優れていた為時と束の間の喜び
花山朝の終焉と不遇の歳月
父の不遇が育てた漢学教養
紫式部の想像力と『源氏物語』第一部の特質
『源氏物語』と「日本紀」の性格
中国の〈紀〉が育てた『源氏物語』の想像力
第五章 物語文化山脈の輝きー天喜三年斎院歌合「題物語」の復原ー
日本文学像をどう捉えるか
日本文学における女性作家の活躍
平安女流文学を生んだもうひとつの文化圏
斎院とは何か
大斎院選子文化圏の存在感
大斎院選子サロンと物語
六条斎院●子内親王家の物語制作と『類聚歌合』巻の発見
六条斎院歌合「題物語」と復原資料の概括
『栄花物語』の物語合情報
物語合の『後拾遺集』情報
歌合「題物語」の復原とさまざまな角度からの分析の可能性
物語題号の自立性
歌題としての物語名と詠み手との関係
物語合の内実をもっていた歌合「題物語」
庚申の夜の「題物語」の開催日
贈答歌前半部の解読
贈答歌後半部の解読
相互補完的な『後拾遺集』情報
物語合にふさわしい内実
歌合という形式と物語制作の限界
物語文化山脈の輝きとしての物語合
【参考】
1 散逸物語の時代別区分(平安時代)と資料別分類(鎌倉時代)
2 こんなにたくさんあった王朝物語目録
3 物語の出で来はじめのおや
4 平安文人たちが親しんだ志怪小説
5 『古今和歌集』における「風吹けば」歌
6 『大和物語』における「風吹けば」譚
7 記録された「歌絵合」(永承五年四月二十六日前麗景殿女御延子歌絵合)
本書のための参考年表
あとがき
内容説明
平安から鎌倉さらに南北朝期まで500年に及んだ王朝物語の時代をダイナミックに捉えた、日本の物語文明史!源氏物語の背後にある失われた多くの物語をも視野に入れたとき、日本の王朝物語=『源氏物語』という単純な図式は成り立たなくなる。時空を越えて日本の王朝物語を語り尽くす。
目次
第1章 知られざる物語山塊の発見―新たなる物語の時代像
第2章 最初の峰々と東アジア文化圏の波動―古伝承から初期物語へ
第3章 歌物語とその尾根の行方―『伊勢物語』二十三段の物語史
第4章 物語の山巓の形成―『源氏物語』の想像力と紫式部の知的坩堝
第5章 物語文化山脈の輝き―天喜三年斎院歌合「題物語」の復原
参考
著者等紹介
神野藤昭夫[カンノトウアキオ]
1943年東京都文京区生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了。博士(文学)。跡見学園女子大学文学部教授。北京日本学研究センター客員教授、国文学研究資料館客員教授のほか、早稲田大学、聖心女子大学、駒澤大学、青山学院大学、お茶の水女子大学、日本大学、京都大学、山東大学(中国)などの兼任講師を歴任。またNHKラジオ第二放送「古典講読の時間」講師、NHK教育テレビ「古典への招待」講師をつとめた。編著書に、『散逸した物語世界と物語史』(若草書房、第21回角川源義賞受賞)ほかがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。