出版社内容情報
【金融イノベーションの光と影を歴史的に解明】
十字軍遠征、大航海時代の資金調達から始まったお金を回す仕組みは、交易ルートの開拓とともに進化、大規模化していった。それが、君主による私的ファイナンスから国家によるファイナンス(財政)へと国家運営の手段となり、南海会社バブル、異端児ジョン・ローを生み出した。そして産業革命によってファイナンスの巨額化が生じ、その要請に応えるべく近代株式会社が成立。資本と経営の分離が生じた。またコーヒーハウスから発祥した証券取引所は、次第に組織化され、流通市場も拡大し、コーポレートファイナンスの拠点として成長していく。そして、ニューヨークは産業革命後の勢いが陰るロンドンに代わってファイナンス拠点に成長していく。様々なリスクを回避すべく誕生した金融エンジニアリングはリスクの発見から創造へと暴走を始めるようになり、ブラックマンデー、サブプライム・リーマンショックを招く。経済発展の縁の下の力持ちとして成長・進化していったファイナンスが、先進国を破滅の淵に追い詰めるまでを様々なエピソードを交えて興味深く解説する。
【目次】
プロローグ
第1章 ファイナンスと金融ビジネスの始まり
第2章 中世物語の始まり──十字軍遠征とファイナンス
第3章 商業取引の拡大とファイナンス──マーチャントからバンカーへ
第4章 金融業務のボーダレスな展開──マーチャント&バンカーの隆盛
第5章 大航海と交易のさらなる遠隔・広域化の始まり──地中海から大西洋へ
第6章 株式会社の産声──ジョイントストックカンパニーの誕生
第7章 君主の放漫と財政破綻──「国家」債務の肥大とファイナンス
第8章 慢性的財政赤字とファイナンス方法の多様化──イギリスを中心に
第9章 カストディ機能から誕生した現代商業銀行──金匠銀行による信用創造とファイナンス
第10章 国家債務としての銀行券の確立──中央銀行の創設
第11章 不特定多数からのファイナンス──証券市場の成立
第12章 庶民を熱狂させた投機商品──商品デリバティブの店頭取引
第13章 証券市場の発展──ニューヨーク証券取引所
第14章 コーポレートファイナンスへの第一歩──産業革命と証券発行市場の拡大
第15章 金融による支配への根強い嫌悪──中央銀行の創設が遅れたアメリカの特異性
第16章 ファイナンスの長期化・大規模化──マーチャントバンクとインベストメントバンク
第17章 アメリカに群がる大陸マネー──インベストメントバンクの台頭
第18章 エマージングな投資機会を一般投資家に──投資信託の誕生
第19章 広がる中流層のための運用情報ビジネス──格付会社の登場と発展
第20章 コーポレートファイナンスへの注目──インベストメントバンクの発展
第21章 資本市場の膨張と崩壊──銀行業と証券業が分離された契機
第22章 変革を迫られた証券業──機関化と手数料の自由化
第23章 押し寄せる市場変革の波──機関化と金融技術革新
第24章 市場機能の変質──機関化の新展開
第25章 証券市場の多様化と市場間競争
第26章 大義のもとで表舞台へ──デリバティブの上場取引
第27章 「悪魔?」が起こした市場崩壊──金融デリバティブ取引の暴走
第28章 住宅モーゲージと貯蓄貸付組合(S&L)
第29章 投機の対象となった企業の暖簾──敵対的買収
第30章 富裕層向けの代替的な運用機会の模索──オルターナティブ(投資)ファンド
第31章 上流域でのコーポレートファイナンス──起業から公開まで
第32章 要件緩和が生んだファイナンス──サブプライム・リーマンショック
第33章 脆さを招いた金融ビジネスの大規模化──自己資本規制の強化
エピローグ